今でも城に居住しているかと思うほど姿を見かけることが多いが、ゆっくり顔を合わせて声をかけられるのは久しぶりだった。


「久しぶりね、アデル。元気そう」


続けてそう言われて、アデルは慌てて立ち上がった。


「クレア様も。ご健勝なご様子、何よりです」


お尻の埃を軽く叩き、彼女の前で敬礼をする。
それを見て、クレアはふふっと笑った。


「アデルは相変わらず騎士を目指してるのね。なんでも最近はセディが敵わないこともあるとか」


クレアは楽しげに会話を続けるが、その言葉に出てきたセドリックの名前に、アデルはギクリと頬の筋肉を引き攣らせた。
浮かべた笑顔がぎこちなくなるのが、自分でも感じられる。


「女も強くならなきゃいけない時代が来るのかしら。そうなったら物騒ねえ。そうだわ、アデル。今度私にも剣術を教えてもらえないかしら?」

「はい、もちろん。喜んでお相手させていただきます」


王女が自ら剣を振って身を守らなければいけない事態にならないよう、自分たち騎士がいる。
そうは思っても、クレアの言う通り心得として身につけていて無駄にはならないことだ。
それに、アデルにとっても、一緒に剣を振える女性が城にいるのは嬉しいこと。