自分が剣を振っていなくても、仲間の剣捌きを見ているだけで、余計なことを考えずに済む。
そうしてがむしゃらになっていなければ、今日のアデルは稽古に集中できなかったのだ。
昼食の時間になると、稽古に励んでいた騎士たちも訓練場から引き上げていく。
他の騎士見習いがアデルにも声をかけたが、彼女は首を横に振って誘いを断った。
朝食も、半分しか手をつけなかった。
胸がいっぱいで、なぜだかお腹まで膨れているような、そんな気分だった。
騎士が引き上げ、誰もいなくなった訓練場を眺め、アデルは膝を抱え込んだまま、深い溜め息をついた。
そこに頭上からクスクスと笑う声が聞こえてくる。
『アデル』と呼びかけられるのと同時に、彼女はそっと顔を上げた。
「あなたはお食事に行かなくていいの? つい今、騎士たちとそこですれ違ったわよ」
「あっ……クレア王女様」
回廊から逸れてきて、アデルに声をかけたのは、第一王女のクレアだった。
彼女はセドリックより三つ年上の二十四歳で、六年前伯爵家に嫁いでいった。
しかし、交易の仕事に就く伯爵は不在がちで、長い留守の間、クレアは頻繁に子供を連れて城に帰ってくる。
そうしてがむしゃらになっていなければ、今日のアデルは稽古に集中できなかったのだ。
昼食の時間になると、稽古に励んでいた騎士たちも訓練場から引き上げていく。
他の騎士見習いがアデルにも声をかけたが、彼女は首を横に振って誘いを断った。
朝食も、半分しか手をつけなかった。
胸がいっぱいで、なぜだかお腹まで膨れているような、そんな気分だった。
騎士が引き上げ、誰もいなくなった訓練場を眺め、アデルは膝を抱え込んだまま、深い溜め息をついた。
そこに頭上からクスクスと笑う声が聞こえてくる。
『アデル』と呼びかけられるのと同時に、彼女はそっと顔を上げた。
「あなたはお食事に行かなくていいの? つい今、騎士たちとそこですれ違ったわよ」
「あっ……クレア王女様」
回廊から逸れてきて、アデルに声をかけたのは、第一王女のクレアだった。
彼女はセドリックより三つ年上の二十四歳で、六年前伯爵家に嫁いでいった。
しかし、交易の仕事に就く伯爵は不在がちで、長い留守の間、クレアは頻繁に子供を連れて城に帰ってくる。
