その頃、中庭の訓練場では、アデルが縦横無尽に剣を振っていた。
通常に比べても激しい剣の音と勇ましい掛け声が、遥か頭上の天に轟いている。
「はああああっ!!」
「ひいいっ……!」
カーン、キーンと硬質な音を立て、次々と剣を弾かれていく男性騎士や見習いたち。
さながら戦場のような訓練場を見て、ライアンは最初こそ苦笑していたが、他の騎士たちから必死の形相で進言され、結局アデルを止めざるを得なかった。
「ライアン様! このままでは、訓練場が屍の山になります!!」
兄から『剣を休ませろ』と止められたアデルは、わずかに憮然とした表情で訓練場から引き上げた。
それでも、稽古の途中でその場を離れる気にはならず、木陰を探して、隅の木の下に膝を抱えて座り込んだ。
夏が近い。
頬を撫でる風はどこか生温く、湿気を帯びている。
アデルはチェインメイルの上から着た、ふんわりした白い上衣の首元を、ボタンを外して寛げた。
軽く叩いて風を受ける。
それだけでも、汗を掻いた肌の表面温度が下がるような気がした。
額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
後頭部の高い位置で結んだ髪の毛先が、胸元にかかっている。
手で払い、背中に流しながら、アデルは剣を交わす騎士仲間の動きを観察していた。
通常に比べても激しい剣の音と勇ましい掛け声が、遥か頭上の天に轟いている。
「はああああっ!!」
「ひいいっ……!」
カーン、キーンと硬質な音を立て、次々と剣を弾かれていく男性騎士や見習いたち。
さながら戦場のような訓練場を見て、ライアンは最初こそ苦笑していたが、他の騎士たちから必死の形相で進言され、結局アデルを止めざるを得なかった。
「ライアン様! このままでは、訓練場が屍の山になります!!」
兄から『剣を休ませろ』と止められたアデルは、わずかに憮然とした表情で訓練場から引き上げた。
それでも、稽古の途中でその場を離れる気にはならず、木陰を探して、隅の木の下に膝を抱えて座り込んだ。
夏が近い。
頬を撫でる風はどこか生温く、湿気を帯びている。
アデルはチェインメイルの上から着た、ふんわりした白い上衣の首元を、ボタンを外して寛げた。
軽く叩いて風を受ける。
それだけでも、汗を掻いた肌の表面温度が下がるような気がした。
額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
後頭部の高い位置で結んだ髪の毛先が、胸元にかかっている。
手で払い、背中に流しながら、アデルは剣を交わす騎士仲間の動きを観察していた。
