羽織った時は、セドリックの体温とラベンダーの精油の香りが残っていた。
今はもう温もりはないし、ラベンダーは香らない。
ただの緋色のマントだ。
これも明日には誰か後輩の騎士見習いにでも預けよう。
そう思いながら、マントから手を離した。
その時。
「アデル様。失礼いたします」
部屋にコツコツとノックの音が響き、アデルはハッとしながら箪笥の戸を閉めた。
「はい」と返事をすると、ドアがゆっくりと開かれる。
ドア口に立っていたのは、王家に仕える女性の召使いだった。
「夜分に失礼いたします。薬師から塗り薬を預かって参りましたので」
彼女は一歩室内に足を踏み出し、手の平に乗せた小さなガラスの容器を、アデルに両手で差し出してきた。
それを見て、セドリックが『薬を届けさせる』と言っていたことを、アデルは思い出した。
「わ、わざわざありがとう」
そう言って、彼女から薬を受け取る。
毒虫に刺された時によく効く薬草を潰して練った物だろう。
蓋を開けてみると、薬草特有のツンとした匂いが鼻をくすぐった。
召使いが出て行ってから、アデルは何気なく自分の首筋を摩ってみた。
さすがに何かに映して見ないと確認できない。
アデルは窓辺に立ち、外の闇に浮かび上がらせるようにして、首筋を映してみた。
今はもう温もりはないし、ラベンダーは香らない。
ただの緋色のマントだ。
これも明日には誰か後輩の騎士見習いにでも預けよう。
そう思いながら、マントから手を離した。
その時。
「アデル様。失礼いたします」
部屋にコツコツとノックの音が響き、アデルはハッとしながら箪笥の戸を閉めた。
「はい」と返事をすると、ドアがゆっくりと開かれる。
ドア口に立っていたのは、王家に仕える女性の召使いだった。
「夜分に失礼いたします。薬師から塗り薬を預かって参りましたので」
彼女は一歩室内に足を踏み出し、手の平に乗せた小さなガラスの容器を、アデルに両手で差し出してきた。
それを見て、セドリックが『薬を届けさせる』と言っていたことを、アデルは思い出した。
「わ、わざわざありがとう」
そう言って、彼女から薬を受け取る。
毒虫に刺された時によく効く薬草を潰して練った物だろう。
蓋を開けてみると、薬草特有のツンとした匂いが鼻をくすぐった。
召使いが出て行ってから、アデルは何気なく自分の首筋を摩ってみた。
さすがに何かに映して見ないと確認できない。
アデルは窓辺に立ち、外の闇に浮かび上がらせるようにして、首筋を映してみた。
