碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

これでは、誰がどう見てもアデルが王国の見習い騎士とは思わないだろう。
いや、アデルだとわからないかもしれない。


「まあまあアデル……さすが私の娘だわ。ちゃんと着飾ればこんなに綺麗になるじゃない」


立ち尽くすアデルの背後で、母であるアシュレー侯爵夫人がレースのハンカチを目元に当て涙ぐんでいた。
いつもは上司として厳しい父も、アデルが侯爵令嬢であることを思い出したかのように、ほおっと息を吐いて娘の美しいドレス姿に見惚れている。


「本当だな、お前のこんな娘らしい姿を見たのはいつ以来だろうか……」


しみじみと零す侯爵夫妻の言葉通り、アデルがまともにドレスを身に着けたのは、社交界デビューした十二歳の時以来だ。
彼女のこの姿を見慣れないのは、両親だけではない。
むろん、アデル自身も同じだ。


「お父様、お母様っ……! 冗談やめてください。私はこんな格好してる場合じゃないの! だって今日はセディ……王太子殿下の誕生パーティーで……」


両親と自分の間の温度差に焦ったアデルは、ドレスの裾をバサッと手で払いながら振り返った。
同時に、窓の外で西の空に傾きかけている夕陽に気付き、慌てて窓辺に駆け寄る。


「た、大変! 早くお城に戻らなきゃ。あ~もうっ! パーティーに間に合わない!!」


アデルはあたふたしながら、豪華なレースが重ねられた裾を、むんずと両手で持ち上げた。