碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

二人並んで塔の中に入り、階上にあるセドリックの部屋に向かう。
石の階段を弾むように上るセドリックを見つめながら、ライアンはやはり不可解な気分で首を傾げた。


「……なあ、セディ」


自分でも納得したつもりなのに、と思いながら、ライアンは彼の背に呼びかけていた。


「何? ライアン」


セドリックの声は明るい。


「お前、本当にあの姫君のこと……」


促されるまま問いかけて、ライアンは結局口を噤んだ。
聞いてどうする、と自分に言い聞かせる。


セドリックの様子がいつも通りでおかしいなんて、そんなことを気にする自分の方が支離滅裂だ。
ライアンは今度こそ自分をそう納得させて、言葉をのんだまま首を横に振った。


「いや、すまない。なんでもないんだ」


ライアンが自分の言葉をそう打ち消すと、セドリックは何度か瞬きしてから更に階段を上っていく。


この主塔の五階部分がセドリックを始め、王家の兄弟たちの居室だ。
階段から廊下に逸れ、一番突き当たりの広い部屋が、王太子であるセドリックの居室。


ライアンはそのドアの前まで彼を送ると、室内に足を踏み入れるセドリックに、一度敬礼してみせた。
それを見て、彼はクスッと笑う。


「今夜はありがとう、ライアン」

「ん、ああ」


セドリックからの謝辞に、ライアンは頷いた。