碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

馬車は城門を通り過ぎ、御者は主塔の前で馬を止めた。
ライアンは一番に外に降り、先にセドリックに手を貸した。
彼が両足で地面を踏み締め、両腕を空に突き上げながら身体を伸ばすのを横目に、ライアンは妹の手を取った。
アデルは軽く飛び降りるような勢いをつけて馬車から降りる。


「お休みなさい。セディ、お兄様」


アデルがそう挨拶して騎士団宿舎の方に足を踏み出すと、セドリックが『アデル』とその背に声をかける。
アデルは足を止め、一度振り返った。


「後で薬を届けさせるから」


セドリックにかけられた言葉に、恐らく無意識だろうが、アデルが首筋に手を当てる。
セドリックはその仕草に軽く頷き、ニッコリ笑ってヒラヒラと手を振った。


アデルはひょこっと肩を竦め、小さな声で「ありがとう」と言った。
そのままセドリックに背を向け、小走りで宿舎に向かっていく。


セドリックと並んでアデルが見えなくなるまで見送った後、ライアンは視線をそっと彼に向けた。
少し風が出てきたのか、セドリックのマントの裾がはためいている。


「セディ、部屋まで送るよ」


いつものお忍びの時と同じように、ライアンはセドリックに声をかけた。
セドリックも、『ん』と短く頷く。