碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

やがて、馬車の外がわずかに騒がしくなった。
アデルが屋敷から出てきたのだろう。
門の前まで彼女を見送ってきたのか、母のお小言がライアンの耳にも届いた。


「はいはい。それじゃあ、また来週ね、お母様」


アデルが軽くあしらう声が聞こえ、次の瞬間馬車のドアが外から開いた。


「ふ~……お兄様、お疲れ様」


そう言いながら乗り込んできたアデルが、言葉の途中でギョッと目を剥く。
その反応は無理もない。
アデルはもちろん、自分を迎えに来た馬車に、セドリックが乗っていることを知らなかったのだから。


「セ、セディ!?」

「お疲れ、アデル。里帰り、ご苦労様」


声をひっくり返らせるアデルに、セドリックは飄々と声をかけ、ニッコリと笑った。
アデルは戸惑った瞳をライアンに向けてくる。


「あのな、アデル……」


アデルに説明しようと口を開いたライアンを、セドリックが遮った。


「ライアンと出かけてたんだけどね。帰るついでだから、一緒に迎えに来たんだ」

「ふ、ふ~ん……?」


アデルはわずかに頬を引き攣らせながらも、肩を竦めた。
そのままセドリックの隣に腰を下ろす。
外からドアが閉められ、馬車は走り出した。