碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

ライアンとセドリックを乗せた馬車は、城とは逆方向の森を走り抜けた。
『どう、どうっ』という御者の掛け声で、牽引していた馬の足が止まったのは、アシュレー侯爵家の本邸前だ。


停止した馬車の中で、ライアンはセドリックをそっと窺い見た。
カーテンをずらしてできた隙間から、窓の外に視線を流すセドリックの横顔は、とても涼し気だ。


仮面舞踏会が行われていた屋敷は、城下町の近くにある。
城に戻るには、当然ながら、そこから真っすぐ向かった方が早い。
ライアンも屋敷から出るとすぐ、御者に城に向かうように言ったのだが、それをセドリックが遮った。


『今日、アデルって休みだったよね? きっと家に帰ってるんだろうし、ついでだから迎えに行こう』


セドリックに言われずとも、アデルを迎えに行くことはライアンも予定していた。
セドリックを城に送り届けてから、そのままトンボ返りするつもりだった。
しかし彼の言う通り、真っすぐ迎えに行った方が、用は早く済むしありがたい。


しかし、あの仮面舞踏会の後だ。
馬車の中でセドリックと会ったら、アデルはどんな反応をするだろう。


それが気になり、ライアンは落ち着かない気分で、道中ずっとセドリックの表情を窺っていた。
アデルがなんと返事をしたのかも気になるが、デリケートな問題だ。
いくらなんでも興味津々に聞くことはできず、探り合いのような沈黙が続いていた。