セドリックが妃を選び、結婚式の日程が決まれば、延期になっていた立太子の宣明の儀も執り行える。
それは、フレイア王国の更なる繁栄の礎になる。
その先に続く未来の中でも、アデルは叙勲を受ける日を目標に、日々剣の腕を磨く。
やがて騎士となったアデルは、国王と呼ばれるようになったセドリックと、その妃のそばに仕える。
彼はきっと、立派な王となる。
王国を、国の民を、そして家族を幸せにする立派な王に。
そんな未来が来ることを願い、そしてアデルは確信してきた。
それ以外の未来など、あるはずがない。
それなのに――。
(どうして悲しいって思うの……?)
アデルは自分の心の反応に戸惑い、混乱していた。
そんなアデルに、セドリックが『姫』と短く呼びかける。
「っ、あ……!」
我に返ったアデルは、再びセドリックの瞳を見つめた。
彼は不思議そうに首を傾げている。
それを見て、アデルは慌てて大きく首を横に振った。
何故だか一瞬感傷的になっていた自分を払いのけ、奮い立つ。
「わ、わかりました。それでは、これで本当に最後ですね。……さようなら、殿下」
必死に笑顔を浮かべようとしたが、頬が引き攣ってしまい上手く笑えない。
見苦しい笑顔になってしまっても、仮面で隠れてセドリックには見えない。
口元が震えてしまったが、なんとか誤魔化せたと思った。
それは、フレイア王国の更なる繁栄の礎になる。
その先に続く未来の中でも、アデルは叙勲を受ける日を目標に、日々剣の腕を磨く。
やがて騎士となったアデルは、国王と呼ばれるようになったセドリックと、その妃のそばに仕える。
彼はきっと、立派な王となる。
王国を、国の民を、そして家族を幸せにする立派な王に。
そんな未来が来ることを願い、そしてアデルは確信してきた。
それ以外の未来など、あるはずがない。
それなのに――。
(どうして悲しいって思うの……?)
アデルは自分の心の反応に戸惑い、混乱していた。
そんなアデルに、セドリックが『姫』と短く呼びかける。
「っ、あ……!」
我に返ったアデルは、再びセドリックの瞳を見つめた。
彼は不思議そうに首を傾げている。
それを見て、アデルは慌てて大きく首を横に振った。
何故だか一瞬感傷的になっていた自分を払いのけ、奮い立つ。
「わ、わかりました。それでは、これで本当に最後ですね。……さようなら、殿下」
必死に笑顔を浮かべようとしたが、頬が引き攣ってしまい上手く笑えない。
見苦しい笑顔になってしまっても、仮面で隠れてセドリックには見えない。
口元が震えてしまったが、なんとか誤魔化せたと思った。
