「いや、このまま知らずにおきましょう。知ってるのに追い求められない方が、辛くて苦しい」
「っ……」
その言葉は、セドリックが『仮面の姫君』に向けた訣別だとわかった。
アデルは大きく息をのみ、胸がドクドクドクと嫌な音を立てて脈打つのを堪える。
セドリックがアデルにそんな寂しい別れの言葉を告げた理由は、もちろんアデルにもわかっていた。
王太子という立場であるが為に。
このフレイア王国の繁栄の為に。
一ヵ月後のパーティーで、妃を選ぼうとしている。
その心に息づいていた、情熱的な恋の炎を鎮火させて。
セドリックの心から、『自分』への恋心が消されていく。
消えていく。
「あ、わ、私……」
無意識にそんな言葉が口を突いて出ていた。
それを自分の耳で聞いたアデルは、ハッと言葉をのむ。
何を言おうとしたんだろう。
セドリックの決意は、王太子として当たり前すぎて、不思議でもなんでもないことだ。
そもそも、ライアンも言っていた通り、あのパーティーでそうなるはずだった。
アデルが出席しなければ、セドリックはあの場に集まった姫君の中から妃を選んでいたはずだ。
あれから一ヵ月が経った今頃は結婚式の準備も進んでいて、騎士団の自分もいつも以上に忙しく任務に奔走していただろう。
「っ……」
その言葉は、セドリックが『仮面の姫君』に向けた訣別だとわかった。
アデルは大きく息をのみ、胸がドクドクドクと嫌な音を立てて脈打つのを堪える。
セドリックがアデルにそんな寂しい別れの言葉を告げた理由は、もちろんアデルにもわかっていた。
王太子という立場であるが為に。
このフレイア王国の繁栄の為に。
一ヵ月後のパーティーで、妃を選ぼうとしている。
その心に息づいていた、情熱的な恋の炎を鎮火させて。
セドリックの心から、『自分』への恋心が消されていく。
消えていく。
「あ、わ、私……」
無意識にそんな言葉が口を突いて出ていた。
それを自分の耳で聞いたアデルは、ハッと言葉をのむ。
何を言おうとしたんだろう。
セドリックの決意は、王太子として当たり前すぎて、不思議でもなんでもないことだ。
そもそも、ライアンも言っていた通り、あのパーティーでそうなるはずだった。
アデルが出席しなければ、セドリックはあの場に集まった姫君の中から妃を選んでいたはずだ。
あれから一ヵ月が経った今頃は結婚式の準備も進んでいて、騎士団の自分もいつも以上に忙しく任務に奔走していただろう。
