「前回よりも、招待客の数は減らされることになっているんです。恐らく……君は正式な招待客ではなかったと思うから、招待状は届かないでしょう。ですから、この間と同じように、忍び込んでほしいんです」


セドリックは、いつからその言葉をアデルに告げようと考えていたのだろうか。
彼の声に淀みはなく、早口ながら流暢で、アデルの胸に真っすぐ届き染み入ってくる。


アデルは胸がきゅんとするのを感じながら、軽く足元の土を蹴った。
そして『ふふ』と短く乾いた笑い声を立てる。


「……姫?」

「忍び込む、だなんて。お城はいつも騎士団に守られてます。私ごときが、そんな簡単に入り込める場所ではありません」


一息にそう言ってから、アデルはセドリックをそっと見上げた。


「それとも……王国騎士団の警備は、そんな簡単に忍び込めるほど、脆いものだとでも仰いますか?」


そんなはずがない。
アデルは普段の任務に誇りを持ち、セドリックに胸を張って問いかける。


「……そうですね」


アデルの返しに、セドリックはぎこちなく微笑んだ。
けれどすぐに表情を引き締める。


「『忍び込めない』。……それが、僕に対する姫のお答えですか?」


どこか探るような口調で訊ねられ、アデルはビクッと肩を強張らせた。
そんな彼女の一挙手一投足を見逃すまいと言うように、セドリックは真っすぐな視線を向けてくる。