「お母さん…?お母さん‼」

 目の前には血を流して倒れている母。
 後ろには私たちを狙ってきているよくわからない人たち。
 なんでよ?私たち普通に暮らしていただけなのに…。
 なんで私たちがこんな目に合わないといけないの?

「か、カプラ…」

 声も出すもそれはもう虫の息。

「お母さん、今喋っちゃだめだよ…!死んじゃうよ‼」
「カプラ、私はもうダメみたい…」
「そんなことないよ!まだ、まだ…!」

 母は手を私の頬へ寄せる。
 すると頬から暖かいぬくもりが伝わる。
 それはだんだんと温かさを失っていくのが、怖くて仕方なかった。

「私がいなくなったら『孔雀』と名乗る人のところへ行きなさい。きっとあなたを助けてくれるから…。それと、これを受け取って」

 母が私に渡したもの…それはペンダント。
 小さいころよくほしがっていたものだ。
 これを渡すということは母はもうダメなのだと…悟ってしまった。

「生きて…。生きて、きっと幸せに暮らして…ずっとずっと愛しているわ…」

 そういうと母は目を閉じ、体の力が全部抜けきってしまった。

「うぅ…。お母さん…!」

 私は動かなくなった母を後にし、追手から逃げる。
 探さなきゃ。
 『孔雀』という人を探さなくちゃ…!
















 あれから一週間が経つ。
 いつどこに、あの追手がいるかわからない。
 頼れる人もいない…。
 もう、心も体もボロボロだ。