午前の部が終わり、生徒達は教室に戻って昼食をとっている。
生徒会のメンバーは本部に残っていたので、僕もそこでお昼ご飯を食べることにした。

「ひとまず午前の進行は上手くいったね」
「はい。大きな遅れもありませんし、ここまでは順調です」

球技大会のしおりを確認しながら言う僕に、石動が返事をする。

「でも大変なのはここからですよ。準決勝にもなると事前に対戦するチームが決まっていませんから、報告ミスのないようにしないと。去年はそれで大変でした。なあ副﨑」

 石動は後ろに座っていた副崎に話しかけるが、彼女は弁当箱を持って黙ったままだ。

「おい、副﨑」
「先輩、石動さんが呼んでいますよ」
「え? あ、どうしたの?」

二度目の声掛けにも反応がなく、隣にいた会計の平沢が肩を軽く叩いて呼んだところでやっと副崎は反応する。

「球技大会って毎年さ、午前よりも午後の方が大変になるよな」
「ああ、はい。午前とは違って、予めしおりには載ってないチームの対戦になりますからね。時間報告でミスがあると皆を混乱させてしまうんですよ」
「え……」

その場にいた全員が、一瞬固まる。

「いや、それはさっき俺が説明したから」

そう言って石動が笑い出すと、それに誘われたように平沢達も笑い出す。

「あはは……」

副崎もやってしまったという表情で照れ笑いを浮かべる。
何でも卒なくこなす生徒会長だが、今のように天然なところもある。
そんな一面も彼女の魅力の一つだろう。  

……と、僕は勝手に思っていた。
今考えれば、副崎の頬が少し赤くなって見えていたのを、なぜ照れているからだと判断したのだろう。
それほどまでに僕は球技大会を成功させることに頭が一杯で、目の前の変調にすら気付けない程余裕がなかったのだった。