「こ、ここです」

ゴミ捨て場に着くと、副崎は指をさしてゴミを置く場所を指示する。

「ここに捨てておけばいいんだね」
「はい……」

相変わらず彼女は顔を上げない。
いくらなんでも心配なってきたので、僕は直接質問する。

「どうした副崎。具合でも悪いの?」

返事がない……。
二度三度声をかけても、副崎は反応しなかった。

「副﨑!」

僕は彼女の顔を覗き込む。
「はい!」

副崎は声を裏返し、泡を食ったような様子で返事をする。
よく見ると彼女は頬を少し赤らめている。

「やっぱり、具合が悪いんじゃないのかい?」
「だ、大丈夫です! 大丈夫ですから! ははは……」

彼女は笑っているが、どうにもそれが作りものように思える。

「でも、顔が赤……」
「ほ、ほんとに大丈夫ですから! では私はこれで!」

僕の言葉を遮って一礼すると、副崎は校舎の方向へ走って行ってしまう。

「副崎……?」


夕暮れ時に吹く春風が、周りの木々を小刻みに揺らしていた。