僕は階段を急いで上がり、前のめりになった彼女の肩と、冊子を受け止めようとした。

「あ……」

二人の距離が一気に縮まる。
思わず僕は副崎の腰の辺りに手を回してしまい、傍から見ると抱きしめているような体勢になる。
幸い、彼女に怪我をした様子は見られず、上の方に積まれていた冊子が十冊程度落ちただけで済んだ。

「あ、ありがとうございます……」

場の空気が、張り詰めた静寂に包まれる。
彼女の吐息が耳に入り、僕の心臓が激しく脈を打った。

「あ、あの……」
「ん?」
「もう、大丈夫です……」
「あ、ああ、ごめん」

僕は副崎の体からすかさず手を放す。
彼女も自分の体勢を整えた。


「お、落ちた冊子拾わなきゃいけないね!」

必要以上に大きい声で切り出し、僕は落ちた冊子を拾い始める。
だが、副崎の方は動こうとしない。

「えっと……」

戸惑う僕だったが、ひとまず全ての冊子を拾いあげる。
そうして拾った冊子の半分を彼女に差し出す。

「半分は僕が持つよ。この量を一人で持つのは厳しいでしょ」
「え、ああ……」

差し出された冊子が目に入ったからか、ようやく彼女は我に返ったようだ。

「ありがとう……ございます」

小声で礼を言う副﨑。
少し不審に思ったが、ここは追求せず、僕は冊子をどこに運ぶべきか尋ねる。

「これ、どこに持っていけばいい?」
「しょ、職員室です……」

副崎はそう言うと足早に歩き始めてしまう。
彼女の様子が気になりつつも、僕らは職員室へと歩いた。