「久田先生、どうも」
「ど、どうも。どうしたんだい?」

彼女がこちらに来るとは思っていなかったので、反応に困ってしまう。
僕は持っていたコーヒーを一口飲んだ。

「いえ。ゆったりとコーヒーを飲まれているから、お暇なのかなと思いまして」
「ぶっ……」

勢いよくコーヒーを戻す僕。
幸いカップの中で全て受け止められ、床に飛び散ることは無かった。
近くで見ていた先生達が、僕に分からないように笑う。

「あのな副崎、別に僕は暇なわけではないからな。授業も終わったし、一服していただけだよ」
「分かってますよ。冗談じゃないですか」


副崎はとぼけたような笑みを浮かべる。
本当に分かっているのか……。

「では私、生徒会でやることがあるので戻りますね。久田先生もコーヒー飲んだ後は頑張ってください」

皮肉たっぷりの言い回しをして去っていく副崎。
間違いなく僕をおちょくっている。
僕はしかめっ面をしながら彼女を見送った。