「そういえばお父さん、なんでここが分かったの?」

思い出したかのように副崎が父親に聞く。
父親は照れ笑いを浮かべながら、その質問に答える。

「優が教えてくれたんだよ」
「優君が?」
「あの子から突然電話が掛かってきたんだ。美奈が追い詰められて学校を飛び出して行ったから、助けに行ってやってくれとね。最初は会議があると断ったんだが、その後彼に、『あんたの一番大切なものが無くなってもいいんだな』って怒られてしまった。それで目が覚めたよ。自分は一体何のために生きているのか思い出させられた。大したもんだよ、あの子は」
「そうなんだ……。後でお礼を言わないとね」

感謝で胸が一杯といった表情をする副崎。
実際僕も、藤澤には感謝してもしきれない。
彼のおかげで、僕はこうして此処に来られた。
余程副崎のことが好きなんだろう。
僕も彼に顔向けできるように頑張らなければ。

「さて、学校に戻るぞ。ここまでしたんだから、絶対に説教が待っているだろうな」
「あははは……」

僕も副崎も御手洗先生も、副崎の父親の言葉に苦笑する。

「まあ、私も一緒に怒られてやるさ」

副崎の父親は、僕らには顔を見られないようにして呟くように言った。
副崎にも聞こえていたらしく、彼女は嬉しそうに微笑む。

激しかった波の音はいつしか冷静さを取り戻し、黙って僕らの会話を聞いていた。