僕は裏から学校外へと抜け出し、いなくなった副崎を探す。
とはいったものの、一体どこを捜すべきなのか。
電話を何度かかけてみたが繋がらない。
何の手掛かりもないまま、闇雲に捜すしかないのだろうか。
そんな八方塞がりの状態に手を焼いていると、前方に見覚えのある一人の男性生徒の姿を捉えた。

「あれは……藤澤?」

目を凝らすと、何となくその男子生徒が藤澤優だと分かる。
まさかあいつ、授業をほっぽり出して副崎を捜しているのか。

「おい、藤澤」

後ろから近づき声をかける。

「え?」

こちらを振り返った藤澤は体中に汗をかいており、制服のシャツがびっしょりと濡れている。

「久田……お前!」

彼は僕のことを確認するや否や、胸ぐらを掴んできた。
あまりの勢いに押し倒されそうになったが、僕は左足の踵に力を入れて何とか踏ん張る。

「何やってんだよ!」

狂気すら感じられるような鋭い目つきで睨む藤澤。

「何やっているって、お前こそどうしてこんなところにいるんだよ」
「うるせえ! 俺の質問に答えろ。美奈と何があったんだよ!」

胸ぐらを掴む力が強くなっていくのが分かる。
襟元が締まり、息が苦しい。

「まっ、待て藤澤……。分かったから、分かったから放してくれ。これじゃ喋れない」
「ちっ」

藤澤は舌打ちしながらも、僕から手を放す。

「はあ……はあ……。昨日のことだろ。僕は副崎にお願いされて、水族館に行ったんだ。そして……」
「美奈に告白されたのか?」

少し落ち着いたように見えるが、未だに怒りは収まらないといった口調で藤澤が言った。

「なんだ、知っているんじゃないか。そうだよ……、僕は彼女に好きだと言われた」

切れた息を整えながら僕は話す。
どこまで話そうか迷ったが、ここまで知られていては何かを隠しても仕方がない。