「この写真を見て」

御手洗先生に言われるまま机の上にある写真を見てみると、そこに写っていたのは、昨日の僕と副崎の姿だった。水族館で一緒にいるところ、二人で公園を散歩しているところが、しっかりと撮られてしまっている。

「これは一体、どういうことなんだね?」

教頭の横谷先生が厳しい顔をして僕に問い詰める。

「あ……」
「事実……なの?」

御手洗先生が戸惑いながらも、僕に尋ねる。

「はい……、そうです」

僕がそう答えると、先生達はお互いに顔を見合わせた。

「なんてことをしているんだ君は! 確か君は前の学校でも、こういうことがあったそうじゃないか!」

横谷先生は机を叩き、怒りを露わにして僕を睨む。

「だからね、こういうやつと一緒の職場になるのは嫌なんですよ」
「横谷先生、落ち着いて下さい。今過去の話に触れても仕方がないでしょう。それに、久田先生の前の学校であったことは、事実であるかどうかの確認はとれていません」
「フンッ……」

校長先生に諭された横谷先生は、苛立ちを隠せぬまま話すのを止める。

「久田先生、改めて聞きますが、この写真が事実なのは間違いないですね?」
「はい……」

校長先生の質問に、僕は正直に頷く。

「副﨑美奈との間に恋愛関係等、教師と生徒を越えたような関係があるのですか?」
「それは……」

ない、ときっぱり言わなければ。
告白されはしたが、僕が断れば問題ない。
きちんと話せば二人の間には何もなかったことにできる。
それなのに、こんな状況になっても僕は答えを出すことを躊躇っている。

「まさか」

御手洗先生が僕の顔を覗き込む。

「いえ、決して付き合っているとかでは……」

曖昧な答え方をする僕。
目が泳いでいることが自分でも分かる。
先生達は皆怪訝そうな表情をしているが、校長先生は次の質問をする。

「わかりました。ではこの写真についての経緯を教えてください」
「はい……」
「他の先生は退出していただけますか? それぞれにやることもあるかと思いますし、ここからは私が聞いて、状況を整理してから皆さんにお伝えします」

校長先生に言われ、他の先生が会議室から出て行く。その後、僕は今回の件の詳細を全て話した。ただ一つ、副崎から告白を受けたという話は除いて……。