彼女はこちらに背を向けているため顔は見れないが、姿勢のいい凛とした姿にただ目が離せない。




「いらっしゃい、ここに座って聞いてるといいよ。これメニューね。」




マスターらしき男性が人差し指を立てながら小声でそう言うと、入ってすぐのカウンター席に案内された。

しかも、彼女が見える場所に。







しばらく聞き入っていたが、曲が終わったのか、彼女の歌は静かに終わった。



それを見計らっていたマスターは、カップを持って彼女に近づき、話し始めた。





『今の歌、いい曲だね。』




「この前の定期演奏会で歌ったんです。夕焼け空が、曲のイメージにぴったりだったから、つい。」




空?彼女の言葉につられ、外を見てみる。