わたしは塾講師をしていて、その勤め先の本社は関西にあるのだけど、今年は週のうち三回が関西の教室で授業をする日で、残りの週の三回は関東で授業をする日、とかいう、生活の拠点を失わせ、わたしが関西で暮らす人間なのか関東で暮らす人間なのか衣食住のうち住を揺らがせてアイデンティティーを削ってやろうという会社からの嫌がらせを受けているのだ、去年の重役との面談のときに、なんで生きないといけないんでしょうか?なんてふざけた質問をしたせいで会社の偉い人に嫌われていて、今年の面談ではそんなふざけた口は聞けないように自己なるものを削り取ろうという試みなのかもしれない、はあ。
宿泊先のホテルは十時に追い出されるのに、塾っつーのは平日は生徒の学校が終わった後に授業が始まる夜型フクロウ的な仕事だから、今日わたしが行く吉祥寺教室も開館するのは一時過ぎぐらいで、それまでわたしは仕事以外に縁もゆかりもない東京の地を彷徨うことになるのですよ、毎週だけど。タリーズの狭い丸まった机でパソコンを開いてテスト作りをしていたのだけど、その間しばらくずっと机の上に出していたスマホは黒い画面で眠りっぱなしに死んでいたのだけどようやく目覚め、ラインの通知である緑色に縁取られたアレを表示させて生き返った。
『じゃあ、今から中谷くんとランチしてくるわ!にょんちゃんも仕事頑張って』
わたしは呆気にとられて、カチカチタタタターンと熱心に文字盤を叩いていた手をふっと止め、まだ表示が映ったままのスマホを手に取って、特に理由なくそれを上下にシェイクした、でも映し出された文字は変わらず、かえって画面は消灯してまた真っ暗なし死に体に戻っただけだった。わたしが週三も関東にいてセックスの相手ができないから浮気しようというのか・・・・・・中谷くん???なにそれだれだ???とわたしの頭は見ず知らずの中谷くんに取って代わられ、わたしの大好きな大好きな大好きな健太くんのアナルを中谷くんの肉棒でがんがん動物的に腰を振って犯されているところが浮かんだ、中谷くんの顔は知らないからのっぺらぼうだけど、でも中谷くんはアッシュとかなんかおしゃれな感じに髪を染めてそれが爽やかなぐらいに短くカットしてささっとワックスで動きを出したみたいな健太くんよりももっと若い24歳ぐらいの若者で、最近よく街で見る細身スキニーデニム男子みたいに細くて背はまあまあひょろっと高くて、そんな彼が細身に似合わずぷっくらグロテスクに膨らんだおっきな肉棒を健太くんの体内に出し入れしている。ああ、超許せない。健太くんはいわゆるネコというやつで、中谷くんはタチというやつなのか?いや、わたしは腐女子的な方面には全く明るくないので、どっちが入れる方でどっちがアナルを差し出す方なのか知らないのだが適当に言った。でも、自分の肉棒を出し入れせずに、後ろから入れられてはうはう言って立ってるだけ、ということから語源が来ているなら、健太くんがタチなのか?などと更に適当な解釈を加えてみるけれどそんなことはどうでも良い。中谷くんもどうでも良い。わたしが興味関心を抱くのは健太くんにだけだ、生きていく以上それなりに色んなことに興味がある雰囲気を出さないと生き辛いので、生徒の成績とか授業態度とか宿題の提出状況とか公開テストの結果とか会社の人の悪評とか天気気候とかに一応関心があるふりをしているけれど、でもわたしは健太くんにしか興味関心がない、健太くんはわたしの神だ。でもそれは健太くんは完璧な聖人君子で全てをわたしに与えてくださる、健太くんのおっしゃることに耳をすませ従っていれば万事上手くいく、的な神ではなく、わたしにとって健太くんはすべてであるという比喩だ。人間力的な、魂の偏差値的な話になるならば健太くんは全く神ではない。魂の偏差値的な話なら健太くんはそこそこ出来の悪い生徒だろう、偏差値は五十を余裕で下回り、四十前後であろうとなんらおかしくはないだろう、だってうちの塾、偏差値高いし。でも、そんなことはいい。
健太くんは男の裸体と女の裸体をハイどうぞって並べてみたら、女の裸体にしか興味と勃起を示さない人なのだと勝手に思い込んでいたのだけれど、そんなこともないのだろうか。むしろ健太くんは若い中谷くんとやらをお金を出して買ったのだろうか、中谷くんはウリをして暮らしているのだろうか、それとも普段はカフェなんかでバイトしてるフリーターで、ときどき健太くんみたいなバイとかゲイの男の求めにお金で応じるのだろうか。健太くんは中谷くんの身体にいくら支払ったのだろうか、でもそれは本当に中谷くんの身体だけに支払われた金額なのだろうか、そこまでなら健太くんが三万円を払っていようと許すことができるかもしれない、が、健太くんが中谷くんの身体と精神がセットになったものを三万円で時間割で購入しようとしていたときわたしは健太くんを許すことができない。精神はだめ。健太くんはわたし以外の人の精神を欲しがってはいけないし、健太くんはわたし以外の人に精神を動かされてはいけない。
ラブホテルだろうか。心斎橋の、いつもわたしと行く綺麗なラブホテルだろうか、それとも中谷くんはもっと場末感、昭和感がある、古めかしいわざとらしいラブホテルが好きなのだろうか、それとも健太くんの事務所で壁に手をついて立ちながら中谷くんに挿入されて、隣にも事務所を構えている人がいることを考えて声を殺して口の中でだけ喘ぎ声を溢すのか、もしくは中谷くんの女の子みたいに細くて白い綺麗な指がついた手が健太くんの口を抑えるのか。あー、それで健太くんは何回も何十回も執拗に突かれてメスイキするのか、あっあー、健太くん大嫌い。今にも隣の人が頬張りかけているホットドックを奪い取って、それを壁に叩きつけて白い壁に黄色いつぶつぶのマスタードの跡をつけたくなっていらいらして、でもいくらか残った理性で座りづらい足のやたら長いテーブルからついついついと歩いていき、カウンターでドリンクにタピオカを注いでいたお兄さんに向かって声を掛ける。
「あの」
そのお兄さんはわたしの相手をしたくなかったのか聞こえない振りをして、おたまになみなみ掬った黒いぷちぷちのつぶつぶをココナッツミルクかなんか白い液体が入ったプラスチックカップに注ぎいれ終わった。もう一度声を掛けるべきか、留まっている間にお兄さんは顔をあげた。
「なんでしょうか?」
「あの、お水頂けますか」
聞こえてたなら早く返事しろやこのクソが、ココナッツミルクが入ったプラスチックカップにおたまからなみなみのタピオカ注ぐってそんな神経使う作業か、と薄く苛立つ自分を抑えながら、つとめて無表情でお願いする。新作ケーキの試食にどうぞみたいな小さい紙コップに入れられた水を手渡され、ありがとうございますと言いつつそれを受け取りその場で一歩も歩み出さないままゴブゴブと飲む。いらだつ。はらだたしい。気持ちを抑えるために水を口から心に浴びせようとして、でもこんな少量の水じゃ足りなくて、プハー、も言えねえわ。健太くんが、メスイキ。わたしの大好きな健太くんが、普段あんまり喘いだりしない声を出したりしない健太くんが、事務所の隣の人に聞こえてしまうために溢れ出そうな声を精一杯抑えてメスイキした、ひどいよ。健太くんはその時、中谷くん好きいって言いながらイッて、そして中谷くんは健太くんの無防備なアナルを突きながら健太くんがむくむくぶち上げたチンコを握って擦って健太くんの頭からわたしのことをすっかり忘れさせる快を与えていたんだよ、ひどいよ、中谷くんはお金をもらってウリしてるだけだから別にひどくないけど健太くんがひどいよ。
「すいません、もう一杯お水頂いても?」
「あーはい」
店員のお兄さんは迷惑とも喜んでともつかない微妙に薄ら笑いをしたような無表情でわたしが差し出した小さな紙コップを受け取り、それをカウンター内のゴミ箱にさっと放ると、新しい紙コップにまた水を注ぎ入れた。
「あー、ちょっとお待ちくださいねー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お待たせしましたー」
そのお兄さんは二回もお水のおかわりを頼まれ、しかもその一回をその場で飲み干しておかわりを要求するという部活終わりの中学生のようなことをされたので怒っているのかもしれなかった、さっきはアリの水のみ場かというぐらい小さなコップに水を注いだくせに、今度はトールサイズの紙コップに、油断すれば溢してしまいそうなほどたぷたぷの水が注がれていた。あの、怒ってるんですか?と尋ねたかったが、わたしは仕事前の正午過ぎでアルコールを摂取して酔っているわけでもなくいたって平常心で、彼がそこはかとなく示唆した怒りに対して率直に踏み込むのは愚直なることと思われたので、あ、ありがとうございますとだぶだぶのラージの紙コップを握り自分の席へ慎重に帰っていった、やたらと足の長い座る人間の快適さを無視した机に戻って、それを一気飲みして健太くんへの怒りを沈めようとしたのだけれど、半分ほど水を飲んだところで、はーなんや水やないかって気持ちになる。水を入れて濃度を薄めようとしただけで上手く薄まるもんか。
健太くんがお金を出して中谷くんとホモセックスしようと、もしくは中谷くんが単なる純粋なる友人でそこらへんの大箱カフェで適当に鶏肉のソテー野菜和えでも食べるとしても何でも、わたしはそこにいるのがわたしでないことが羨ましくて、その誰かをわたしに替わらせてほしい。別に、健太くんとセックスするとか体内に肉棒を差し入れて出し入れしてメスイキとかそれ自体が問題ではなくて、それがただの身体ならまあ許せる範囲内でむしろメスイキよりも、中谷くんが実はなんでもないお友達でおともらちランチしてる方が嫌、男とか女とか鳥とかイルカとか生物とか菌類とか、つまりそれが何物であるかということより、なにかが健太くんの心に触れるということ、健太くんの喜怒哀楽を弾くこと、それが羨ましくて健太くんの心に触れるものは全部わたしにしたくて全ての健太くんの外のものに取って代わりたくて仕方ない。
宿泊先のホテルは十時に追い出されるのに、塾っつーのは平日は生徒の学校が終わった後に授業が始まる夜型フクロウ的な仕事だから、今日わたしが行く吉祥寺教室も開館するのは一時過ぎぐらいで、それまでわたしは仕事以外に縁もゆかりもない東京の地を彷徨うことになるのですよ、毎週だけど。タリーズの狭い丸まった机でパソコンを開いてテスト作りをしていたのだけど、その間しばらくずっと机の上に出していたスマホは黒い画面で眠りっぱなしに死んでいたのだけどようやく目覚め、ラインの通知である緑色に縁取られたアレを表示させて生き返った。
『じゃあ、今から中谷くんとランチしてくるわ!にょんちゃんも仕事頑張って』
わたしは呆気にとられて、カチカチタタタターンと熱心に文字盤を叩いていた手をふっと止め、まだ表示が映ったままのスマホを手に取って、特に理由なくそれを上下にシェイクした、でも映し出された文字は変わらず、かえって画面は消灯してまた真っ暗なし死に体に戻っただけだった。わたしが週三も関東にいてセックスの相手ができないから浮気しようというのか・・・・・・中谷くん???なにそれだれだ???とわたしの頭は見ず知らずの中谷くんに取って代わられ、わたしの大好きな大好きな大好きな健太くんのアナルを中谷くんの肉棒でがんがん動物的に腰を振って犯されているところが浮かんだ、中谷くんの顔は知らないからのっぺらぼうだけど、でも中谷くんはアッシュとかなんかおしゃれな感じに髪を染めてそれが爽やかなぐらいに短くカットしてささっとワックスで動きを出したみたいな健太くんよりももっと若い24歳ぐらいの若者で、最近よく街で見る細身スキニーデニム男子みたいに細くて背はまあまあひょろっと高くて、そんな彼が細身に似合わずぷっくらグロテスクに膨らんだおっきな肉棒を健太くんの体内に出し入れしている。ああ、超許せない。健太くんはいわゆるネコというやつで、中谷くんはタチというやつなのか?いや、わたしは腐女子的な方面には全く明るくないので、どっちが入れる方でどっちがアナルを差し出す方なのか知らないのだが適当に言った。でも、自分の肉棒を出し入れせずに、後ろから入れられてはうはう言って立ってるだけ、ということから語源が来ているなら、健太くんがタチなのか?などと更に適当な解釈を加えてみるけれどそんなことはどうでも良い。中谷くんもどうでも良い。わたしが興味関心を抱くのは健太くんにだけだ、生きていく以上それなりに色んなことに興味がある雰囲気を出さないと生き辛いので、生徒の成績とか授業態度とか宿題の提出状況とか公開テストの結果とか会社の人の悪評とか天気気候とかに一応関心があるふりをしているけれど、でもわたしは健太くんにしか興味関心がない、健太くんはわたしの神だ。でもそれは健太くんは完璧な聖人君子で全てをわたしに与えてくださる、健太くんのおっしゃることに耳をすませ従っていれば万事上手くいく、的な神ではなく、わたしにとって健太くんはすべてであるという比喩だ。人間力的な、魂の偏差値的な話になるならば健太くんは全く神ではない。魂の偏差値的な話なら健太くんはそこそこ出来の悪い生徒だろう、偏差値は五十を余裕で下回り、四十前後であろうとなんらおかしくはないだろう、だってうちの塾、偏差値高いし。でも、そんなことはいい。
健太くんは男の裸体と女の裸体をハイどうぞって並べてみたら、女の裸体にしか興味と勃起を示さない人なのだと勝手に思い込んでいたのだけれど、そんなこともないのだろうか。むしろ健太くんは若い中谷くんとやらをお金を出して買ったのだろうか、中谷くんはウリをして暮らしているのだろうか、それとも普段はカフェなんかでバイトしてるフリーターで、ときどき健太くんみたいなバイとかゲイの男の求めにお金で応じるのだろうか。健太くんは中谷くんの身体にいくら支払ったのだろうか、でもそれは本当に中谷くんの身体だけに支払われた金額なのだろうか、そこまでなら健太くんが三万円を払っていようと許すことができるかもしれない、が、健太くんが中谷くんの身体と精神がセットになったものを三万円で時間割で購入しようとしていたときわたしは健太くんを許すことができない。精神はだめ。健太くんはわたし以外の人の精神を欲しがってはいけないし、健太くんはわたし以外の人に精神を動かされてはいけない。
ラブホテルだろうか。心斎橋の、いつもわたしと行く綺麗なラブホテルだろうか、それとも中谷くんはもっと場末感、昭和感がある、古めかしいわざとらしいラブホテルが好きなのだろうか、それとも健太くんの事務所で壁に手をついて立ちながら中谷くんに挿入されて、隣にも事務所を構えている人がいることを考えて声を殺して口の中でだけ喘ぎ声を溢すのか、もしくは中谷くんの女の子みたいに細くて白い綺麗な指がついた手が健太くんの口を抑えるのか。あー、それで健太くんは何回も何十回も執拗に突かれてメスイキするのか、あっあー、健太くん大嫌い。今にも隣の人が頬張りかけているホットドックを奪い取って、それを壁に叩きつけて白い壁に黄色いつぶつぶのマスタードの跡をつけたくなっていらいらして、でもいくらか残った理性で座りづらい足のやたら長いテーブルからついついついと歩いていき、カウンターでドリンクにタピオカを注いでいたお兄さんに向かって声を掛ける。
「あの」
そのお兄さんはわたしの相手をしたくなかったのか聞こえない振りをして、おたまになみなみ掬った黒いぷちぷちのつぶつぶをココナッツミルクかなんか白い液体が入ったプラスチックカップに注ぎいれ終わった。もう一度声を掛けるべきか、留まっている間にお兄さんは顔をあげた。
「なんでしょうか?」
「あの、お水頂けますか」
聞こえてたなら早く返事しろやこのクソが、ココナッツミルクが入ったプラスチックカップにおたまからなみなみのタピオカ注ぐってそんな神経使う作業か、と薄く苛立つ自分を抑えながら、つとめて無表情でお願いする。新作ケーキの試食にどうぞみたいな小さい紙コップに入れられた水を手渡され、ありがとうございますと言いつつそれを受け取りその場で一歩も歩み出さないままゴブゴブと飲む。いらだつ。はらだたしい。気持ちを抑えるために水を口から心に浴びせようとして、でもこんな少量の水じゃ足りなくて、プハー、も言えねえわ。健太くんが、メスイキ。わたしの大好きな健太くんが、普段あんまり喘いだりしない声を出したりしない健太くんが、事務所の隣の人に聞こえてしまうために溢れ出そうな声を精一杯抑えてメスイキした、ひどいよ。健太くんはその時、中谷くん好きいって言いながらイッて、そして中谷くんは健太くんの無防備なアナルを突きながら健太くんがむくむくぶち上げたチンコを握って擦って健太くんの頭からわたしのことをすっかり忘れさせる快を与えていたんだよ、ひどいよ、中谷くんはお金をもらってウリしてるだけだから別にひどくないけど健太くんがひどいよ。
「すいません、もう一杯お水頂いても?」
「あーはい」
店員のお兄さんは迷惑とも喜んでともつかない微妙に薄ら笑いをしたような無表情でわたしが差し出した小さな紙コップを受け取り、それをカウンター内のゴミ箱にさっと放ると、新しい紙コップにまた水を注ぎ入れた。
「あー、ちょっとお待ちくださいねー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お待たせしましたー」
そのお兄さんは二回もお水のおかわりを頼まれ、しかもその一回をその場で飲み干しておかわりを要求するという部活終わりの中学生のようなことをされたので怒っているのかもしれなかった、さっきはアリの水のみ場かというぐらい小さなコップに水を注いだくせに、今度はトールサイズの紙コップに、油断すれば溢してしまいそうなほどたぷたぷの水が注がれていた。あの、怒ってるんですか?と尋ねたかったが、わたしは仕事前の正午過ぎでアルコールを摂取して酔っているわけでもなくいたって平常心で、彼がそこはかとなく示唆した怒りに対して率直に踏み込むのは愚直なることと思われたので、あ、ありがとうございますとだぶだぶのラージの紙コップを握り自分の席へ慎重に帰っていった、やたらと足の長い座る人間の快適さを無視した机に戻って、それを一気飲みして健太くんへの怒りを沈めようとしたのだけれど、半分ほど水を飲んだところで、はーなんや水やないかって気持ちになる。水を入れて濃度を薄めようとしただけで上手く薄まるもんか。
健太くんがお金を出して中谷くんとホモセックスしようと、もしくは中谷くんが単なる純粋なる友人でそこらへんの大箱カフェで適当に鶏肉のソテー野菜和えでも食べるとしても何でも、わたしはそこにいるのがわたしでないことが羨ましくて、その誰かをわたしに替わらせてほしい。別に、健太くんとセックスするとか体内に肉棒を差し入れて出し入れしてメスイキとかそれ自体が問題ではなくて、それがただの身体ならまあ許せる範囲内でむしろメスイキよりも、中谷くんが実はなんでもないお友達でおともらちランチしてる方が嫌、男とか女とか鳥とかイルカとか生物とか菌類とか、つまりそれが何物であるかということより、なにかが健太くんの心に触れるということ、健太くんの喜怒哀楽を弾くこと、それが羨ましくて健太くんの心に触れるものは全部わたしにしたくて全ての健太くんの外のものに取って代わりたくて仕方ない。
