酔っ払って打ったやつ

もうそろそろ夏が来るって感じ。あたたかい、とあつい、の間ぐらい。ちょうどいい温度で気持ちいい、雨も降ってないし、と愛子は嬉しそうだ。今日の愛子はこないだ買ったばかりの白いスカートを穿いている。それに薄いピンク色のTシャツ。Tシャツはちょっと寒いかもとも思ったんだけど、ちょうど良くてよかったね、と俺もにっこりと笑う。十三駅から歩いて河原でぶらぶら歩く散歩コースが愛子は好きだ。大阪の十三は安っちい飲み屋やパチンコ屋やラブホテルに溢れる、昭和と平成の間に存在するみたいな町なのだけど、一昨年の夏の淀川花火を十三の河原で見てから、愛子はときどきここで散歩したがる。ジョギングのおじちゃんおばちゃんはいても、前述した通り綺麗な川でも町でもないところなのだけど。一年に一度、花火でお祭りがある時だけ活気があって賑やかなのに、364日はぱっとしなくて人が少なくて一番楽しかった時のことを思い出して悲しくなるのが好き、と言う。俺はそれをよく分からないと思うんだけど、けんちゃん太り気味でしょう?河原でもお散歩して運動した方がいいよ、と愛子に言われると返す言葉もない。俺は携帯ショップの販売員、毎週休みは火曜と金曜。なので、夏ひたひたの火曜の平日の昼前なんかに、愛子と河原を歩いているのだ。初夏の空だからか今日が天気がいいからか季節の事情的なことは分からないが、今日の空は雲があんまりなくてひらすら青い。死にたい。空は青くて広くて先がなくて遠くて永遠なのに俺はこなんなにも矮小。
 ねえさっきからなんで手を繋いでくれないの、愛子は少し悲しそうにぼやく。俺は恥ずかしがりやだからさ、人がいたら恥ずかしくなるだろ、と返す。愛子がきっと目を右往左往前後左右させて、けんちゃん、散歩の犬もおじさんも青年もいないから、ね?と、きゅるんと俺を見上げるのだ。愛子。愛子の大きなくりくりとした目に見つめられて、俺はぴくんと心を動かされる。愛子かわいいよお前はほんとにかわいいな。白い肌は太陽の光を浴びてますます白く感じられる。すずしい、風がふいて、一拍遅れて、河原の言うならばどぶっぽい匂いがぷうんと鼻についた。俺は大ぶりの茶色いボストンバッグの残りのファスナーをびーっと開けて、そこから腕を垂らして手を握った。全部のファスナーを開けると愛子の身体の全部が見えて俺のなけなしの胸が痛くなる。ごめんねこれ以上大きいカバンだと手持ちできないから、窮屈でごめんね足とか折らないと入れないから痺れちゃったでしょう。やだなーいつものことだから慣れっこだよ、と愛子は笑う。お寺の人が来てお家の仏壇の前に四時間正座させられたってわたしは大丈夫な身体になっちゃったんだからね、と。四時間も正座させたれたら俺もう二度と立てないかもと言うと、愛子はくすっと笑った。愛子は誰よりずっとずっと可愛いから、少女漫画みたいな笑い方ができるんだよ。
 川で魚が泳いでるのを見つけると楽しい、と愛子が言っていたのに、今日は鯉なんかが泳いでいるのをまだ見つけられていない。緑色のもずく、みたいなものは水に揺られてぷかぷかしてるけど、やっぱ草だしなあ、と思う。愛子はもずく好きだよ、と言う。ええ、やめてよ、と俺が言うと、愛子はなんで?と首を傾げる。愛子のしろいしろい体に、黒っぽい茶っぽいぬるぬるうねうねしたものが入るなんて悪い冗談みたいじゃないか。どういうこと?さっきからけんちゃんの言ってることよく分からないよ。いや、だってもずくを食べたり雑穀米を食べたりステーキを食べたりするなんて愛子が月並みな女みたいじゃないかって言いかけたのを愛子はテレパシーで読み取ったのか、わたしは月並みで平凡な女だよ、と愛子が言ったのが聞こえた気がした。初夏前の、綺麗でもないつまらない河原だ。ときたま白鷺がいるぐらいでどちらかというと時たま風に乗って泥っぽい腐ったような匂いがかすかに流れてくる河原だ。でも俺は愛子はとくべつだよとくべつだよと言ってあげたくて、階段のそばの長い草が生い茂っている辺りに愛子を、...愛子を入れたボストンバッグをとすんと押し倒した、出す愛子の白い四肢を。狭いカバンやファスナーに何度か引っ掛かってその度に愛子を傷つけているようなかすり傷ぐらいつけてしまったんじゃないかぐらい軽い気がかりを感じるけど。ああ。ぼうぼうに生えた草の上で、愛子の足を広げる。愛子は、恥ずかしいからやめてよ人が来るかもしれないし、と僕に悲願する、恥ずかしいから恥ずかしいからここはけんちゃんのおうちじゃないから人が来るところだからマラソンの人が来ちゃう。僕を鼓舞するために愛子が悲願するビニールでできた肌はこの時期になると生ぬるい。草が生えている。自治体かなんかが手入れしれないんだろう身長の高い草が生えている。それに階段の影になって隠れてる気がする誰も人がいない。僕は幼稚園で一人だけお着替えできてないのを保母さんに指摘された男の子みたいに慌ててズボンのベルトを外してファスナーを下ろして、パンツも放った。不細工な猫がプリントされたTシャツだけを身に付けて、俺は愛子の股の間に向かって腰を振る愛子の白いスカートを捲り上げて。愛子の額が日光を反射してぴかっと光っている。愛子愛子愛子を俺に突かれていても表情を変えないね?...愛子が傷ついた顔をした唇をきゅっとすぼめて。ごめんねごめんね僕には見えているよ本当はね。でも愛子があまりにもポーカーフェイスだからついそう言ってしまったんだごめんね気持ちいいって顔をしているのは分かっているよ?愛子がはあはああと吐息を激しく立ててる音がする。やべっ。みどりみどろの草の向こう、ジョギングしてる若者俺草むらに頭からだ全部を低くして隠れるこっち見たかもしれないけど俺は彼の顔を見てないから目が合ったか分からない通り過ぎていく離れていく随分日光に焼かれた黒っぽい体が。汚い。黒は汚い。白い愛子ちゃんはきれいだね、と横を向いていた目線を戻して言うと、相対評価なの?と愛子は膨れさせる白い頬を。ああごめんねそういううことじゃなくて、下手糞な言い訳は愛子ちゃんは聞かない、で、続きは?は照れ笑いのような計算の顔で続きを急かす。ふるふるふるふる腰はふるためにあるんだよ愛子ちゃんきもちいい?ふっる、愛子ちゃん、あ、風が吹くずんずん腰を振ってても風が優しく吹くのを感じる腐った泥っぽい匂い?愛子ちゃんの局部の匂い。臭い局部を舐める愛子ちゃんちょっとさあ俺興奮してるから舐めれるけど愛子ちゃん病気なんじゃないの他の男とエッチした?ああ、舐める味がしないビニールなんなら俺の唾液の味しかしないんだろうけど今興奮してるからそれも感じないんだよ。愛子ちゃん。俺のたるんだ尻を生ぬるい風が撫でるよ。あ、愛子ちゃんでも美味しいよきっと、あ、愛子ちゃん動くの?腰が二つの手に支えられて頼りなくぐねぐね動いて俺は一生懸命腰を動かして、あ、あ、いっちゃうって。あ、あ、愛子ちゃんの大きな目が俺を見てるよ腰がぐねぐねしるよあーんって気持ちよくって泣きそうなんでしょう?白いビニールと、それを飛び出して緑のにょきにょき茎に飛んだ白。白、白って聖なる色なんでしょう?