だめださみしいそばにいてけんちゃんがクリスピークリームなんとかドーナツで昨日買ってきたドーナツの真ん中の穴から覗き込んで覗き穴で部屋を見てもべっとりした額縁を通してもなんにも変わって見えなくて、けんちゃんけんちゃん早く帰ってきてって思いながら昨日のべたついたドーナツをかじったけどやっぱりべったりしていてもう古くなっちゃってるよ当然って感じの不愉快な舌触りでその一口は無理やりぐちゃぐちゃ喉へ落としたけど立ち上がって台所の流しの横においたファミマの袋を生ゴミ入れにしたやつにそれをつっこんでくくってバレーボールみたいにして両手をくっつけて打ち上げた飛ばない手首にもさりと当たってかっこ悪くそこのフローリングに落ちていく。かすが落ちなかったかちゃんと袋の口をくくれていたかしゃがんで確かめて、自分が飛ばそうとしたその袋を拾ってもとあった流しの隣に置いておく。べたべたした油と砂糖が指に付着していたので指を洗う、指は簡単に洗える。頭もお腹も簡単に洗える。へへ。指を流しで洗って掛けてあったヒヨコ柄のだっさいタオルで拭いた後ベッドに入る電気をつけたまま眠るわけじゃないでも眠れるといいなと思ってるけんちゃんが帰ってくるまで。それまでわたしの全ての時間はただ逃げられないものとしてそこにあるものであって、でもあるから価値のあるものかというと全くそんなことはなくて、けんちゃんがいない時のわたしの時間は地中に埋もれていたときの蝉の時間と同じぐらい無駄な時間で。あー眩しい蛍光灯、LEDにこないだしてたんだっけか?夜にあかあかと電気をつけた部屋にいても思いっきり天井を向いて蛍光灯と見詰め合ったら眩しい。眩しい、っていうか、白い、黄色っぽい、光。生きていない光、光っているくせに生きていなくて無機質でむしろ生き物を照らすためにある。なんや、わたしを照らしてなんなんや、容疑者発見のパトカーの明かりみたいな感じか。いや、つけたのわたしやけど。あー、あかんあかん。寂しくなるとついどうでもいいものにすごくどうでもいいのに薄っぺらい感情移入をしてしまって関西弁が出てしまう、けんちゃんは関西弁が嫌いなのに。あーけんちゃんが帰ってこないのベッドに入っているのけんちゃんの。わたしは眠るのが大好きで大好きでっていうかチョコレート大好き!みたいなスポーツ大好き!みたいなキラキラ系の大好きじゃないからほんとは時間を早く消し去るための未来のタイムマシン的便利道具として眠りを使ってるだけかもしれないけどでもわたしはけんちゃんと一緒に眠るとき以外あまりこのベッドに入らないんだよ普段は。だってけんちゃんの匂いがついているからね。夜は一緒に眠るから物理的にはいや表面積的には三分の一から半分ぐらいがわたしで残りはけんちゃんの匂いなはずで、わたしは寂しくなるとけんちゃんの匂いが残ってるこのベッドに顔だけつっこんで犬みたいに匂って、わたしの匂いも混じってるのがほんまいらんねんと思いながらできるだけけんちゃんの匂いだけに全神経を集中させて吸うから、だからわたしの匂いなどできるだけいらないものだから普段眠るときはカーペットの上で胎児のように丸まって眠るのだよ。わたし、けんちゃんの匂いのフレグランスがあったら一生それをまとって生きていたい目を瞑る電気をつけたままだけどけんちゃんが帰宅するまで時間をショートカットできるように。裸に黄色い首輪だけをつけた肌に染みる布団がきもちええのお、と思う。雲の中にいるみたいだしけんちゃんの匂いに埋もれるベッドだし、けんちゃんが帰って来ないならもう今しにたーいと思って早く帰ってこいやと思いながら目を瞑るんだけど余計なこと色々考えたら眠れないんだよなあ。だからこの夢見布団に集中しなよって思うんだけど、集中しようと思って寝ようとするときって大体失敗するよねみたいな。目を閉じながら携帯を手の中に握り締めているけんちゃん以外の着信音は全部オフにした携帯。うとうとうと予想に反して眠りに落ちかけて現実との狭間で夢見がちに飛んでたあたりでテレレッ、となんやねんみたいな着信音が鳴って携帯がぶるった。ドコモかよ!不意打ちにいらいらして携帯を壁際に投げつけてその上に作りたてほかほか半熟目玉焼きを落とす想像をしてそのつやつやのオレンジを指でつついたらじゅわって汁があまりにも勢いよく溢れてきて携帯が水没して部屋が水没して、それを見たらけんちゃんはわたしに返信をくれなかったことを反省するかしらと考えた。けんちゃんがこの部屋を開けた途端、どろっとした卵黄の海に浸かっていたら足がすくわれて粘度の高い液体が口に入ってきて喉にからんで呼吸困難になって死ぬかしら一緒に死ぬかしら。けんちゃん!一緒に卵黄の海で死のうよ!人生めんどくさくって長くってイヤでしょ、それなら今わたしと一緒に、ねえ!あー眠れねえ眠れねえ。そっちの方の床に落っこちてる携帯が見えるから連絡が来ていないのも見える、卵黄に包まれても服の狭間に落ちて度重なる服の層に着信音が吸収緩和されてもいない。やっぱけんちゃん卵黄だよなあ。
いつの間にか眠っていたのだろう。ドアががちゃりと開いて、
「あーあ、電気つけっぱなしで寝てるよ」というけんちゃんの声がした!!!のを夢と現実の狭間で聞いた。本当なら、「おかえり、けんちゃん!」と今すぐベッドを飛び出して犬のごとく飛び掛りたかったのだが生憎その時のわたしは金縛りにかかっていた。あー動けねえまじで卵黄取ってくれ、と思うけど実はわたしは冷静で、身体を強い意志を持って動かそう動かそうとしているうちにやがて目が覚めることを知っていたので、足を手を動かそうと冷静に抵抗、っていうか身体は寝てるけど脳は起きてる状態なんだろ?身体も起きろやと。目は開いていない。耳は聞こえる。
「決めたよ今日はもう殺してあげるからね」
けんちゃんの声が耳に届いて、なんだこの人わざとふざけてんのか、卵黄でこの部屋を満たして一緒に死ぬつもりなのかなんなんだよと頭だけ起きている頭で考える。あー、わたしはあなたに抱きついたいのに今日もずっとあなたが早く帰ってくるのを待っていたのにうえええ動かないよう今日の金縛り遅いじゃねえかくそ。
「ぐへえっ」
猛烈な腹部。何にも精神が動かない脊髄反射で飛び起きようとして金縛り解けた。でも無理だった腹筋。目を開けるとわたしのパジャマ越しにお腹に包丁が刺さっていた今朝けんちゃんに朝食を作ったときに使った包丁。なんやねん刺さっとるやんけ猛烈に刺さっとるやんけ不思議に血はさほど出てないけど、あー包丁が刺さってそれが蓋になっているんだねみたいな。でも痛すぎて正直何も頭が真っ白になるんだけど隣を見たらけんちゃんがにんまり笑ってて、あー、あー、あー、けんちゃんはちゃんと後追い自殺してくれるの
?って聞きたかったけどわたしの唇はぶるぶると痙攣していて言葉が出なかった。なにこれ心中なの殺人なの?顔がものすごく青ざめてる気がするもうすぐ死ぬ気がする刺された気がしたいや刺さってるわアハハ。けんちゃんがふいに痙攣するわたしの唇きっと紫色に染まっていてもうすぐフリーザ様の一派になるだろうものにそっと口付けをした、それで後追い系なんだよねって信じられたからわたしはそれでもう良くなってそこで意識を失った。
いつの間にか眠っていたのだろう。ドアががちゃりと開いて、
「あーあ、電気つけっぱなしで寝てるよ」というけんちゃんの声がした!!!のを夢と現実の狭間で聞いた。本当なら、「おかえり、けんちゃん!」と今すぐベッドを飛び出して犬のごとく飛び掛りたかったのだが生憎その時のわたしは金縛りにかかっていた。あー動けねえまじで卵黄取ってくれ、と思うけど実はわたしは冷静で、身体を強い意志を持って動かそう動かそうとしているうちにやがて目が覚めることを知っていたので、足を手を動かそうと冷静に抵抗、っていうか身体は寝てるけど脳は起きてる状態なんだろ?身体も起きろやと。目は開いていない。耳は聞こえる。
「決めたよ今日はもう殺してあげるからね」
けんちゃんの声が耳に届いて、なんだこの人わざとふざけてんのか、卵黄でこの部屋を満たして一緒に死ぬつもりなのかなんなんだよと頭だけ起きている頭で考える。あー、わたしはあなたに抱きついたいのに今日もずっとあなたが早く帰ってくるのを待っていたのにうえええ動かないよう今日の金縛り遅いじゃねえかくそ。
「ぐへえっ」
猛烈な腹部。何にも精神が動かない脊髄反射で飛び起きようとして金縛り解けた。でも無理だった腹筋。目を開けるとわたしのパジャマ越しにお腹に包丁が刺さっていた今朝けんちゃんに朝食を作ったときに使った包丁。なんやねん刺さっとるやんけ猛烈に刺さっとるやんけ不思議に血はさほど出てないけど、あー包丁が刺さってそれが蓋になっているんだねみたいな。でも痛すぎて正直何も頭が真っ白になるんだけど隣を見たらけんちゃんがにんまり笑ってて、あー、あー、あー、けんちゃんはちゃんと後追い自殺してくれるの
?って聞きたかったけどわたしの唇はぶるぶると痙攣していて言葉が出なかった。なにこれ心中なの殺人なの?顔がものすごく青ざめてる気がするもうすぐ死ぬ気がする刺された気がしたいや刺さってるわアハハ。けんちゃんがふいに痙攣するわたしの唇きっと紫色に染まっていてもうすぐフリーザ様の一派になるだろうものにそっと口付けをした、それで後追い系なんだよねって信じられたからわたしはそれでもう良くなってそこで意識を失った。
