「ねえ日が長くなったね、日永は春の季語なんだけど六月になると七時になってもまるくて夏って感じだね、ねえ」と真太郎の部屋のベッドに座って、ベッドに面した壁のところの小さな窓から顔を覗かせたまま言う。外はまだこないだまでの五時前ぐらいに明るい。一軒家の二階。ここから見下ろせる下の道をときどき自転車が通る、おばちゃんと小学生など。「なんなの春の季語ってキモイ、お姉ちゃんってそういうとこ本当にキモイ」という真太郎の声が背中の向こうから聞こえてくる。それは悪意のない軽やかな蓄積。明るいね空が明るい。わたしはその世界の表面的な塗り絵を毎年忘れていて、その年の初夏のたびに発見を覚えた気になるけれど、でも実はまあまあいいんだどうでもいいんだそんなことなど。世界の塗り絵はあくまで表面的で心の表面をさらっとなぞるだけのなんにもならないもの。窓の先に広がるすっかり夕暮れ時なのにそうじゃない空を見ているふりをして、窓の下の枠のところに腕をついて顎をのせて、目を瞑った。風がぷわっと髪を浮かして揺らして顔を撫でてうぜえ、自転車に乗ってうるさく談笑しながらすぐに通り抜けていく小学生の声が聞こえて、うぜえなって思って。真太郎が、うしろにいる、真太郎の部屋。漫画を捲っている気配がする。ぺらぺらぺら、擬態語だから、聞こえません。ワンピースなのさっき見た。漫画ね。真太郎がワンピースが好き。真太郎の部屋にはワンピースが全巻揃っていて、しかも本棚には一巻から順にきれいに整列されている。わたしはワンピースがきらい。きらい・・・だからたまにこっそり真太郎の部屋に入ってワンピースの整列を乱したり上下の向きを逆にしたりしてるんだけど真太郎はきっと気付いてないね。
ときどき、一二分おきぐらいに真太郎のスマホが鳴る。ときどきじゃねえすげえ頻度だ。ぴこん、って鳴く人工的なハムスターの鳴き声。それがうるさいんだ、窓の下を「ゆ~~~うちゃあ~~~ん」「きもいねんおまえ」「えっゆうちゃんってお前やん祐一郎やん自分がきもいん、それ自分がきもいってこと?」って大声で散らしながら通り過ぎていく小学生よりもうるさい精神的なうるささで。精神的なうるささ、というのは気に障るということだ。
「しんちゃんぴこんぴこんうるさい」
「えっしんちゃんって何、キモイやん。っていうか俺の部屋やん、いつまでおるん。っていうかさっきから何してるん」
「外を見てる」
「いや帰って自分の部屋、邪魔やん、リラックスできへんやん」
「リラックスしてるやん。っていうか真太郎がこっそり飼ってたハムスターがわたしの部屋で死んでるから悪いんやんか。今日やであれ。家帰って部屋のドア開けたら、わたしの本に押しつぶされてハムスターが死んでるってあれなんなん。京極夏彦に体液びっちゃりやで。トラウマなるわ。お母さんに秘密で飼うんなら自分の部屋から出さんようにしとき」と言い張るわたしは外を見ている外を通る人を車を人を。嘘、なんにも見てない。
「いや、まあそう言われたらせやけど、おれの方がはるかにショックやし、おれかて段ボールのゲージ入れててんで」
「段ボールはゲージじゃない。そんなことはいいからとりあえず体液が染みた部屋には行かれへん。可哀想やし監督フユキトドケやわ。精神的に換気中やからしゃあない」
「・・・分かったって。ごめん」
「・・・なんていうん、あのハムスターの名前」
「パピコ」
え、なんなん、アイスやん、と思うのと、ぴこん、が同じぐらいに被ってわたしを遮る。初夏とはいえ、日永とは言え、七時になるとまだ、春の夜らしく気温が下がる。ずっと外気に触れていたほっぺたを手で触ると、少し冷たかった。ちら、と後ろを覗くよう見る、真太郎はやや頬をゆるませるようにしてスマホをぽちぽちしていた。中学三年生の弟に、毎月えらく料金のかかるスマホを買い与えるなんておかしいんじゃないのか、という考えがふと頭をよぎる。でも、それなら大学二年生のわたしだってバイトをしているとはいえ携帯代は両親に払ってもらっているわけで大差ないよな、と言いがかり的に気持ちになる。気付かない視線に、だって人はスマホに夢中だからみんなスマホだいすき。電車のお兄さんもお姉さんも真太郎もみんなスマホだいすきだいすき誰が好き?
「さっきから誰とラインしてんの、彼女?」
「そうだけどなに、そりゃあハムスターの話は悪かったけどさあ」
あーそう、うん、弟は悪い子ではない。むしろどちらかというと優しいに傾くんじゃないかといういい子だ。めんどくさい思春期にしても、それほど尖ったような感情が見える子ではないし、それを隠しているようでもない。弟はたぶんまあまあいい子だ。頭はよくない、が、眼鏡が似合う。それまでは裸眼だったけれど、眼鏡を半年ぐらい前に買ってもらってからはなんかくるんだな、分からない、中野くんに似て見えるからかもしれない。
雪残る、だった。いや、うちは兵庫県だから春になってまだ雪が山頂に残っていますなんてことはないんだけど、真太郎の彼女が家に来たのは春の初めごろのことだった。わたしは大学の春休みで本屋のバイトに行っていた日だったんだけども、生理痛がひどくて二時間で早上がりさせてもらった時だった。ずんずんずんずんと迫り来る白目剥いちゃうような生理痛の中、家に辿り着くと、玄関に見慣れないスニーカーがあった。ぎらぎらした銀色のラメのやつで、先端がちょっと黒ずんでいた。へえ誰の?ってちらっと思うけどただいま、と言う気力なくふらふら二階への階段を上がって、なんだろうねあのようやく解放されるぜみたいな許される感あるよねもうすぐ布団だぜみたいな、あっあっあんってそんな、ずっずっずんみたいな、わたしの子宮はずんずんずん重苦しいんだけどみたいな。真太郎の部屋だよねAVかなって思うよねあの子おかあさんとわたしがいないからって大音量でAVかみたいなね思春期の少年、ずんずんずんがもうすぐ救われるのにってロスタイムで思うよねでもなんか違うよねなんか違うって五感だよね。っていうかスニーカーがぴーんと脳細胞に信号を使えるよねo.o1秒かo.o2秒ぐらいでね。あっあー。とか海に沈むもずくのテンションで思うよね。わたしは人間じゃなくてもずくになったよね、セックスしてるものと、それに起これない部外者は、イヌともずくぐらいの違いがあるよね。もうそうなると脳に選択肢はないよねしずかにしずかに真太郎のとなりさんの自分の部屋に入ってしずかにベッドに沈むよね生理痛マックスだもの。やわらかいあたたかい布団を頭まですっぽりかぶって胎児のように丸まって目を閉じるよすぐに眠れるように、おなかの下の子宮のあたりに手を当ててさすさすしながらね。ああ、あぁ聞こえるよ真太郎おとなりさんだもんでも真太郎の声はしないの、じゅりあ(仮)の声だけよ聞こえるのは。じゅりあ、ぐらいがよくない?シズカとかユキエとかいやよね、現実世界に生きてますみたいなちゃんとしたお嬢さんがやや早熟ながら人間の成長の流れにのっとって乱れてたら、なんなのそのレール綺麗なレールうわあコンプレックスってなるよねひゃっはー。ご家族の人が帰ってきたらとか思わないのかな没入しちゃうのかな。じゅりあ、真太郎、わたしは目を瞑っているけど視界の奥で彼らが動き出す、いやそれはもはやわたしが動かしているんだけど真太郎はこないだまでちっさい男の子だったのにもう上手に腰振っちゃうのかなみたいな。わたし、は、ずっとしばらく目を瞑ったまま布団に閉じこもったままじゅりあの声を聞いていた。やたらとわめくAVみたいだなとか思いながら、やっぱりじゅりあはシズカとかユキエじゃないんだろうと思いながら。それでわたしはなんか泣いていたぜんぶしずかになったとき。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い人間はきっといっぱいいるそれは分かりやすく、幼稚園の先生をしていて、卒園して女児が小学生になったら土日に遊んで、飴玉交換と称してディープキスして仕舞いにツイッターにその画像を上げるみたいなそんな分かりやすいやつだけじゃなくてわたしも気持ち悪い。いやわたしは分かりやすく気持ち悪いかもしれないけど、ただ、なんだろう、真太郎は、あたらしいめがねが、にあう。
「真太郎、今日の夕食なにがいい?知ってたかもしれないけどもう七時なんだよね」と聞くと、やっと顔を上げて、「王将かラーメンかマクド」と言う。
「出たよ嫌だわ現代っ子」と言ってやると、「えっ、姉ちゃんは現代っ子じゃないの」と柔らかげな血色のいい赤い唇をうにっとさせる。やっぱり中野くんに似てるんだよあかんな、と思う。でも心の最大の便利なところはそれが口からこぼれ出ず心までで止まるところ「あほか一人でビックマック食べといたら」
「あーごめん、じゃあ唐揚げかカレー」
「からあげめんどくさい」
「聞いといてひどない?じゃあカレー」
「分かった。カレーな。冷蔵庫なにあったっけ。トマトー、とあかんわ、キャベツとレタスばっかりあったかもしれへんあと。買いに行くわ」
「あーほんまに」と返事する真太郎はいつのまにかわたしをさっと置いて漫画の中に心だけいってしまっている。「買い物ついでになんかいる?」と聞くと、「なんもないよ」答える。わたしは、わたしにはなんもない眼鏡の余韻だけを観ている。可愛くて、中野くんに似ている。あ、なんかくらくらする。春のときの生理痛の残りかもしれない。レバーが足りないのかもしれない。空気人形みたいにふしゅーっと空気が抜けて、真太郎のベッドにぺたんと身体を落とす。背中をベッドにもたれさせてワンピースの続きを読み始めた真太郎の後頭部がちょうどそこにある。ベッドカバーが雑にかけられた布団をくうん、と匂うと、真太郎の匂いがして、嫌悪感と欲望と安心が浮かび上がった。真太郎は若くてまっすぐに近いし向かいには小学校のときからずっとあるミッキーの置時計が置いてあるちいさいこどもだしょうがくせいだ、くうん、目の前にあるすぐ手を伸ばせばある、髪の毛をなでて、みた。真太郎が半ばふざけたようにわざとらしく肩をびくっと上げて振り返った、充血したわたしと目が合う、真太郎の眼鏡のなかの目が、
ときどき、一二分おきぐらいに真太郎のスマホが鳴る。ときどきじゃねえすげえ頻度だ。ぴこん、って鳴く人工的なハムスターの鳴き声。それがうるさいんだ、窓の下を「ゆ~~~うちゃあ~~~ん」「きもいねんおまえ」「えっゆうちゃんってお前やん祐一郎やん自分がきもいん、それ自分がきもいってこと?」って大声で散らしながら通り過ぎていく小学生よりもうるさい精神的なうるささで。精神的なうるささ、というのは気に障るということだ。
「しんちゃんぴこんぴこんうるさい」
「えっしんちゃんって何、キモイやん。っていうか俺の部屋やん、いつまでおるん。っていうかさっきから何してるん」
「外を見てる」
「いや帰って自分の部屋、邪魔やん、リラックスできへんやん」
「リラックスしてるやん。っていうか真太郎がこっそり飼ってたハムスターがわたしの部屋で死んでるから悪いんやんか。今日やであれ。家帰って部屋のドア開けたら、わたしの本に押しつぶされてハムスターが死んでるってあれなんなん。京極夏彦に体液びっちゃりやで。トラウマなるわ。お母さんに秘密で飼うんなら自分の部屋から出さんようにしとき」と言い張るわたしは外を見ている外を通る人を車を人を。嘘、なんにも見てない。
「いや、まあそう言われたらせやけど、おれの方がはるかにショックやし、おれかて段ボールのゲージ入れててんで」
「段ボールはゲージじゃない。そんなことはいいからとりあえず体液が染みた部屋には行かれへん。可哀想やし監督フユキトドケやわ。精神的に換気中やからしゃあない」
「・・・分かったって。ごめん」
「・・・なんていうん、あのハムスターの名前」
「パピコ」
え、なんなん、アイスやん、と思うのと、ぴこん、が同じぐらいに被ってわたしを遮る。初夏とはいえ、日永とは言え、七時になるとまだ、春の夜らしく気温が下がる。ずっと外気に触れていたほっぺたを手で触ると、少し冷たかった。ちら、と後ろを覗くよう見る、真太郎はやや頬をゆるませるようにしてスマホをぽちぽちしていた。中学三年生の弟に、毎月えらく料金のかかるスマホを買い与えるなんておかしいんじゃないのか、という考えがふと頭をよぎる。でも、それなら大学二年生のわたしだってバイトをしているとはいえ携帯代は両親に払ってもらっているわけで大差ないよな、と言いがかり的に気持ちになる。気付かない視線に、だって人はスマホに夢中だからみんなスマホだいすき。電車のお兄さんもお姉さんも真太郎もみんなスマホだいすきだいすき誰が好き?
「さっきから誰とラインしてんの、彼女?」
「そうだけどなに、そりゃあハムスターの話は悪かったけどさあ」
あーそう、うん、弟は悪い子ではない。むしろどちらかというと優しいに傾くんじゃないかといういい子だ。めんどくさい思春期にしても、それほど尖ったような感情が見える子ではないし、それを隠しているようでもない。弟はたぶんまあまあいい子だ。頭はよくない、が、眼鏡が似合う。それまでは裸眼だったけれど、眼鏡を半年ぐらい前に買ってもらってからはなんかくるんだな、分からない、中野くんに似て見えるからかもしれない。
雪残る、だった。いや、うちは兵庫県だから春になってまだ雪が山頂に残っていますなんてことはないんだけど、真太郎の彼女が家に来たのは春の初めごろのことだった。わたしは大学の春休みで本屋のバイトに行っていた日だったんだけども、生理痛がひどくて二時間で早上がりさせてもらった時だった。ずんずんずんずんと迫り来る白目剥いちゃうような生理痛の中、家に辿り着くと、玄関に見慣れないスニーカーがあった。ぎらぎらした銀色のラメのやつで、先端がちょっと黒ずんでいた。へえ誰の?ってちらっと思うけどただいま、と言う気力なくふらふら二階への階段を上がって、なんだろうねあのようやく解放されるぜみたいな許される感あるよねもうすぐ布団だぜみたいな、あっあっあんってそんな、ずっずっずんみたいな、わたしの子宮はずんずんずん重苦しいんだけどみたいな。真太郎の部屋だよねAVかなって思うよねあの子おかあさんとわたしがいないからって大音量でAVかみたいなね思春期の少年、ずんずんずんがもうすぐ救われるのにってロスタイムで思うよねでもなんか違うよねなんか違うって五感だよね。っていうかスニーカーがぴーんと脳細胞に信号を使えるよねo.o1秒かo.o2秒ぐらいでね。あっあー。とか海に沈むもずくのテンションで思うよね。わたしは人間じゃなくてもずくになったよね、セックスしてるものと、それに起これない部外者は、イヌともずくぐらいの違いがあるよね。もうそうなると脳に選択肢はないよねしずかにしずかに真太郎のとなりさんの自分の部屋に入ってしずかにベッドに沈むよね生理痛マックスだもの。やわらかいあたたかい布団を頭まですっぽりかぶって胎児のように丸まって目を閉じるよすぐに眠れるように、おなかの下の子宮のあたりに手を当ててさすさすしながらね。ああ、あぁ聞こえるよ真太郎おとなりさんだもんでも真太郎の声はしないの、じゅりあ(仮)の声だけよ聞こえるのは。じゅりあ、ぐらいがよくない?シズカとかユキエとかいやよね、現実世界に生きてますみたいなちゃんとしたお嬢さんがやや早熟ながら人間の成長の流れにのっとって乱れてたら、なんなのそのレール綺麗なレールうわあコンプレックスってなるよねひゃっはー。ご家族の人が帰ってきたらとか思わないのかな没入しちゃうのかな。じゅりあ、真太郎、わたしは目を瞑っているけど視界の奥で彼らが動き出す、いやそれはもはやわたしが動かしているんだけど真太郎はこないだまでちっさい男の子だったのにもう上手に腰振っちゃうのかなみたいな。わたし、は、ずっとしばらく目を瞑ったまま布団に閉じこもったままじゅりあの声を聞いていた。やたらとわめくAVみたいだなとか思いながら、やっぱりじゅりあはシズカとかユキエじゃないんだろうと思いながら。それでわたしはなんか泣いていたぜんぶしずかになったとき。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い人間はきっといっぱいいるそれは分かりやすく、幼稚園の先生をしていて、卒園して女児が小学生になったら土日に遊んで、飴玉交換と称してディープキスして仕舞いにツイッターにその画像を上げるみたいなそんな分かりやすいやつだけじゃなくてわたしも気持ち悪い。いやわたしは分かりやすく気持ち悪いかもしれないけど、ただ、なんだろう、真太郎は、あたらしいめがねが、にあう。
「真太郎、今日の夕食なにがいい?知ってたかもしれないけどもう七時なんだよね」と聞くと、やっと顔を上げて、「王将かラーメンかマクド」と言う。
「出たよ嫌だわ現代っ子」と言ってやると、「えっ、姉ちゃんは現代っ子じゃないの」と柔らかげな血色のいい赤い唇をうにっとさせる。やっぱり中野くんに似てるんだよあかんな、と思う。でも心の最大の便利なところはそれが口からこぼれ出ず心までで止まるところ「あほか一人でビックマック食べといたら」
「あーごめん、じゃあ唐揚げかカレー」
「からあげめんどくさい」
「聞いといてひどない?じゃあカレー」
「分かった。カレーな。冷蔵庫なにあったっけ。トマトー、とあかんわ、キャベツとレタスばっかりあったかもしれへんあと。買いに行くわ」
「あーほんまに」と返事する真太郎はいつのまにかわたしをさっと置いて漫画の中に心だけいってしまっている。「買い物ついでになんかいる?」と聞くと、「なんもないよ」答える。わたしは、わたしにはなんもない眼鏡の余韻だけを観ている。可愛くて、中野くんに似ている。あ、なんかくらくらする。春のときの生理痛の残りかもしれない。レバーが足りないのかもしれない。空気人形みたいにふしゅーっと空気が抜けて、真太郎のベッドにぺたんと身体を落とす。背中をベッドにもたれさせてワンピースの続きを読み始めた真太郎の後頭部がちょうどそこにある。ベッドカバーが雑にかけられた布団をくうん、と匂うと、真太郎の匂いがして、嫌悪感と欲望と安心が浮かび上がった。真太郎は若くてまっすぐに近いし向かいには小学校のときからずっとあるミッキーの置時計が置いてあるちいさいこどもだしょうがくせいだ、くうん、目の前にあるすぐ手を伸ばせばある、髪の毛をなでて、みた。真太郎が半ばふざけたようにわざとらしく肩をびくっと上げて振り返った、充血したわたしと目が合う、真太郎の眼鏡のなかの目が、
