あたしは選挙に行ったことがない。二十歳を超えて一年も経つのに。あたしはニュースを観ない、あたしは新聞を読まない、ネットニュースもスマホのトップに自動的に表示される見出ししか見ない。正直、今の総理大臣が誰かもたまに自信がなくなる。あべっちゃん。しんぞう。分かってるけど。あと、今日の曜日は分かるけど、平成何年かは分からない。
でも、世の中が、眞子さまの結婚と、北朝鮮の原爆とあとなんかで騒いでることぐらいは知ってるんだよ。高校のときの友達が今朝のツイッターで、「北朝鮮まじこわい(顔文字) 原爆とかほんとやめて、こわい」って呟いてたのはよく分からないまじかよおまえそんな生きたいのかよ。あたしは、北朝鮮がここら辺に原爆を飛ばしてくれて、さらさらっと殺してくれたら、それでいいと思うよ。
繋いだ健太の手が少し汗ばんでいる。さっき一緒にラーメンを食べたから。健太はやけに新陳代謝が良くて、熱いものとか辛いものを食べたらすぐに汗をかくの。
「健太、汗、やだわあ」と言う。全然嫌じゃないけど。健太が、「うっせ」とあたしの手を振り払う。「あー。ごめん、いいから、むしろもっと汗だらだらかいて全部の水分が出て干からびてもいいから、ねっ」IQのない口先で考えた言葉を出しながら健太の手を取る。また振り払おうとするから、何も言わないで、取れないようにぎゅっとかたくにぎる。「けんた。けんた、けんた、けんた」口の中で転がすように小さく呟く飴ちゃんみたいにころころする。あたしの舌から甘さが弾かれてぷちっと当たったのか、健太が指であたしの手のひらをやさしくなでた。
あたしは思う。今がちょうどいいタイミングだよ原爆落としてくれって思う。ここら辺の人も上手いこと一瞬で死ねるように。部屋で一人でぬいぐるみを抱きしめてるときじゃなくて、健太と一緒にいるときに死なせてよと思う。そうしたら、不平不満は一つもないのになあ。健太の勤務するパチンコ店までの道を手を繋いで歩く、あたしと健太の隣をごく平均的な三十代後半のサラリーマンが通り過ぎる。三十秒後にはもう顔が思い出せない平均的な顔立ち中肉中背という言葉はあなたのためにあるグループ太い眉毛だげが印象的。えっおじさんは死にたくないの原爆好都合じゃないのまじで?あーもう俺そういう精神ステージにいないんだよねーみたいな?若さゆえの一過性的なやつですかあーそうごめんなさいねオムライス。
「オムライス」
「あっそう食べたいの?」
「ラーメンのあとにオムライス食べたいわけないじゃん健太あたまおかしいんじゃないの」
「おまえだろ」
おまえですねあたしですあたまがおかしいのは。でも、るいともなんだよ。さっきからあたしはあなたと手を繋いでるんだよ。足裏に貼って寝る100均の足の毒素取りシートが朝になったら真っ茶っちゃに染まってるみたいに、あたしの手からあなたの手に毒素が移っていくのよ。逆かもしれないけどお互いに毒素を移しあってるのかもしれないけど。
アメ村です心斎橋です学生がすれ違います学生と言っても大学生じゃなくて中学生か高校生です。六、七人の男女グループです黒髪です、平たく言うとわいわい楽しそうです。タピオカジュース屋の前で立ち止まってドリンクを買い求めることにしたようです。うわいわいわいわいな擬態語は伝わってくるけど音は伝わってこないや。その前に並んでいる大学生ぐらいのギャルが、「タピオカメロンジュース?何それ南国みたいじゃないやばい」って言ったのは聞こえました。今日は商売繁盛だね。薄利多売か。あ、でもドリンクって原価率安いか。まあ原価率なんてどうでもいいけどね。大切なのは、あたしが手を握って健太と歩いているということです。別にそれも大切じゃないんだけど。大切なのは、うーん、健太があたしの精神の隣にいるということです。かまってほしい。ぶらぶらぶら手を振ってみるけれど健太は何も言いません。
「なにかんがえてるの?」逃げの極致みたいなせりふだけどいいんだよ。
「何にも考えてない」死ね。っていうか知ってたけど。わんこそばみたいにわんこオムライスおかわりしまくって胃腸炎とかなんかで死ね。
ああオムライスです。卵で包んだものはすきですか、あーごめん卵子だけじゃないけ精子も入ってるけど。
「卵料理好き?卵掛けご飯すき?」
「え、うん、好きだよ、美月、もうすぐ着く」
はあもうすぐ着くことなんか分かってるわあたしとあなたが会えるのは、あなたのお昼休みの時間だけ。パチンコやさんの、じゃらじゃら、うるさすぎて騒音が脳細胞を壊してしまったの?もっともっともっと頭おかしくあたまわるくなったらいいんじゃない?今日の朝までのことが覚えられないぐらいにね。あー。健太の働くパチンコやさんの扉が開いて人が出てくるうるせえ。あたしの健太がもうすぐ音に埋もれる音に埋もれてあたしの声を聞いてくれなくなる届かなくなる死んで。
「もう行かなきゃ。じゃあ美月も仕事頑張って」と健太が定型文みたいに口元をひくっとさせて笑う。わらう?いや、そんな簡易な笑顔じゃなくて苦しいのも全部ちょうだい。
あたしは、ぷう、と頬を膨らませて、手をひらひらと振る。自動ドアのセンサーが健太に反応してひらいて、ぶっわあああうるせえ、健太がじゃあねありがとって戻っていくスタバのお姉さんと変わらないぐらい安いありがとう。あーでもスタバってそんな安くない?マクドなんかに比べたら。比べる比べる比べるゲームだからな世の中は。
あたしは雑然とした欲望なのか暇つぶしなのか執着なのか人生なんにもありませーんななのか分からない空間の中の人になっていく健太の背中を見ているウィーン閉まるまで。精子。健太はしろい精子を出すよ。あたしは何も出さないよ吸い込むだけだよしかし吸い込むのはゴムだよ。でも、理沙ちゃんは健太を吸い込んだんだってなんで?安全日だからとかばかじゃないの???????????オムライス卵子と精子に包まれたつぶを産むのねなんなの健太はなんでいのちにまけるの。しんでください。っていうか殺してください原爆他力本願。でもどうせ死ぬなら、健太と手を繋いで死にたいから、明日の健太の休憩時間に原爆を落として。キム、・・・なにさん?あべしんぞうちゃんまえは分かるけど、そこまで分かんないやごめんね。
でも、世の中が、眞子さまの結婚と、北朝鮮の原爆とあとなんかで騒いでることぐらいは知ってるんだよ。高校のときの友達が今朝のツイッターで、「北朝鮮まじこわい(顔文字) 原爆とかほんとやめて、こわい」って呟いてたのはよく分からないまじかよおまえそんな生きたいのかよ。あたしは、北朝鮮がここら辺に原爆を飛ばしてくれて、さらさらっと殺してくれたら、それでいいと思うよ。
繋いだ健太の手が少し汗ばんでいる。さっき一緒にラーメンを食べたから。健太はやけに新陳代謝が良くて、熱いものとか辛いものを食べたらすぐに汗をかくの。
「健太、汗、やだわあ」と言う。全然嫌じゃないけど。健太が、「うっせ」とあたしの手を振り払う。「あー。ごめん、いいから、むしろもっと汗だらだらかいて全部の水分が出て干からびてもいいから、ねっ」IQのない口先で考えた言葉を出しながら健太の手を取る。また振り払おうとするから、何も言わないで、取れないようにぎゅっとかたくにぎる。「けんた。けんた、けんた、けんた」口の中で転がすように小さく呟く飴ちゃんみたいにころころする。あたしの舌から甘さが弾かれてぷちっと当たったのか、健太が指であたしの手のひらをやさしくなでた。
あたしは思う。今がちょうどいいタイミングだよ原爆落としてくれって思う。ここら辺の人も上手いこと一瞬で死ねるように。部屋で一人でぬいぐるみを抱きしめてるときじゃなくて、健太と一緒にいるときに死なせてよと思う。そうしたら、不平不満は一つもないのになあ。健太の勤務するパチンコ店までの道を手を繋いで歩く、あたしと健太の隣をごく平均的な三十代後半のサラリーマンが通り過ぎる。三十秒後にはもう顔が思い出せない平均的な顔立ち中肉中背という言葉はあなたのためにあるグループ太い眉毛だげが印象的。えっおじさんは死にたくないの原爆好都合じゃないのまじで?あーもう俺そういう精神ステージにいないんだよねーみたいな?若さゆえの一過性的なやつですかあーそうごめんなさいねオムライス。
「オムライス」
「あっそう食べたいの?」
「ラーメンのあとにオムライス食べたいわけないじゃん健太あたまおかしいんじゃないの」
「おまえだろ」
おまえですねあたしですあたまがおかしいのは。でも、るいともなんだよ。さっきからあたしはあなたと手を繋いでるんだよ。足裏に貼って寝る100均の足の毒素取りシートが朝になったら真っ茶っちゃに染まってるみたいに、あたしの手からあなたの手に毒素が移っていくのよ。逆かもしれないけどお互いに毒素を移しあってるのかもしれないけど。
アメ村です心斎橋です学生がすれ違います学生と言っても大学生じゃなくて中学生か高校生です。六、七人の男女グループです黒髪です、平たく言うとわいわい楽しそうです。タピオカジュース屋の前で立ち止まってドリンクを買い求めることにしたようです。うわいわいわいわいな擬態語は伝わってくるけど音は伝わってこないや。その前に並んでいる大学生ぐらいのギャルが、「タピオカメロンジュース?何それ南国みたいじゃないやばい」って言ったのは聞こえました。今日は商売繁盛だね。薄利多売か。あ、でもドリンクって原価率安いか。まあ原価率なんてどうでもいいけどね。大切なのは、あたしが手を握って健太と歩いているということです。別にそれも大切じゃないんだけど。大切なのは、うーん、健太があたしの精神の隣にいるということです。かまってほしい。ぶらぶらぶら手を振ってみるけれど健太は何も言いません。
「なにかんがえてるの?」逃げの極致みたいなせりふだけどいいんだよ。
「何にも考えてない」死ね。っていうか知ってたけど。わんこそばみたいにわんこオムライスおかわりしまくって胃腸炎とかなんかで死ね。
ああオムライスです。卵で包んだものはすきですか、あーごめん卵子だけじゃないけ精子も入ってるけど。
「卵料理好き?卵掛けご飯すき?」
「え、うん、好きだよ、美月、もうすぐ着く」
はあもうすぐ着くことなんか分かってるわあたしとあなたが会えるのは、あなたのお昼休みの時間だけ。パチンコやさんの、じゃらじゃら、うるさすぎて騒音が脳細胞を壊してしまったの?もっともっともっと頭おかしくあたまわるくなったらいいんじゃない?今日の朝までのことが覚えられないぐらいにね。あー。健太の働くパチンコやさんの扉が開いて人が出てくるうるせえ。あたしの健太がもうすぐ音に埋もれる音に埋もれてあたしの声を聞いてくれなくなる届かなくなる死んで。
「もう行かなきゃ。じゃあ美月も仕事頑張って」と健太が定型文みたいに口元をひくっとさせて笑う。わらう?いや、そんな簡易な笑顔じゃなくて苦しいのも全部ちょうだい。
あたしは、ぷう、と頬を膨らませて、手をひらひらと振る。自動ドアのセンサーが健太に反応してひらいて、ぶっわあああうるせえ、健太がじゃあねありがとって戻っていくスタバのお姉さんと変わらないぐらい安いありがとう。あーでもスタバってそんな安くない?マクドなんかに比べたら。比べる比べる比べるゲームだからな世の中は。
あたしは雑然とした欲望なのか暇つぶしなのか執着なのか人生なんにもありませーんななのか分からない空間の中の人になっていく健太の背中を見ているウィーン閉まるまで。精子。健太はしろい精子を出すよ。あたしは何も出さないよ吸い込むだけだよしかし吸い込むのはゴムだよ。でも、理沙ちゃんは健太を吸い込んだんだってなんで?安全日だからとかばかじゃないの???????????オムライス卵子と精子に包まれたつぶを産むのねなんなの健太はなんでいのちにまけるの。しんでください。っていうか殺してください原爆他力本願。でもどうせ死ぬなら、健太と手を繋いで死にたいから、明日の健太の休憩時間に原爆を落として。キム、・・・なにさん?あべしんぞうちゃんまえは分かるけど、そこまで分かんないやごめんね。
