抵抗しようとした手首を強く握られて、この男の鋭い眼光に当てられ、身震いがした時には、唇に柔らかい感触が張り付いていた。
何度も角度を変えて、口を割り、吸い付くようにキスをされて、隙間を縫って入ってきた冷たい舌にゾクッと震える。
壁一枚、向こう側にはたくさん人がいて、いつ誰が入ってくるかも分からない。
そして、職場でこんなことをしていることへの背徳感を覚えつつも、この男に抵抗する術(すべ)を私は持っていなかった。
手首を抑える冷たい指の力が抜けてもなお、私はそこから逃れられない。
人の力では抗うことが出来ないと知っているからだ。
薄く目を開けると、同じようにほんの少し瞼を上げた部長の、金色に輝く瞳が私を見ていた。
この不思議な目は、私を一度捕らえると離してはくれない。
吸い込まれるようにその眼光を見つめていると、身体の奥まで熱されたように蕩けて、彼のキスを自然と受け入れてしまう。
「んっ…やっ……!」
口が解放されたと思えば首筋にキスが降りていく。
危機を察知して防衛本能が身体の心拍を更に上げて危険信号を発していた。
そうこれは…私の命を脅かすこと。
そして私以外の誰も、知り得ないこと。
私が部長を恐れる理由、私の人生を変えてしまう可能性のある事柄は、まさしくこれだ。
「黙って、俺のものになれよ」
そう言って笑う彼の口角から、人の八重歯よりも鋭い先端を持つ牙が見えた。
この男は、私の人生最大の敵。
彼は、私の血を狙う吸血鬼(ヴァンパイア)だったのだ。
何度も角度を変えて、口を割り、吸い付くようにキスをされて、隙間を縫って入ってきた冷たい舌にゾクッと震える。
壁一枚、向こう側にはたくさん人がいて、いつ誰が入ってくるかも分からない。
そして、職場でこんなことをしていることへの背徳感を覚えつつも、この男に抵抗する術(すべ)を私は持っていなかった。
手首を抑える冷たい指の力が抜けてもなお、私はそこから逃れられない。
人の力では抗うことが出来ないと知っているからだ。
薄く目を開けると、同じようにほんの少し瞼を上げた部長の、金色に輝く瞳が私を見ていた。
この不思議な目は、私を一度捕らえると離してはくれない。
吸い込まれるようにその眼光を見つめていると、身体の奥まで熱されたように蕩けて、彼のキスを自然と受け入れてしまう。
「んっ…やっ……!」
口が解放されたと思えば首筋にキスが降りていく。
危機を察知して防衛本能が身体の心拍を更に上げて危険信号を発していた。
そうこれは…私の命を脅かすこと。
そして私以外の誰も、知り得ないこと。
私が部長を恐れる理由、私の人生を変えてしまう可能性のある事柄は、まさしくこれだ。
「黙って、俺のものになれよ」
そう言って笑う彼の口角から、人の八重歯よりも鋭い先端を持つ牙が見えた。
この男は、私の人生最大の敵。
彼は、私の血を狙う吸血鬼(ヴァンパイア)だったのだ。
