それは桜が見事に咲いた四月のことだった。

「えー、今日から君達も本校の生徒としてー」

校長の長ったらしい話を聞いて、もう何分経つことか。

つまらない話ばっかり。
もっとやるべきことがあるでしょうに。

周りの生徒を見ると、うつらうつらしている人が多い、というか、ほとんどだった。

自分も寝てしまおうか。

そう思った時だった。

「ねぇ。ねぇって!」

隣からヒソヒソとした話し声が聞こえた。

『なんだ…?』

正直校長の話より、そっちの女子生徒2人組の方が気になった。

「隣の人、めっちゃカッコよくない⁉︎」

「分かる!私も思ってた!」

…まぁ、この手の話だろうとは思っていたが。

彼女たちが言っている『隣の人』とはもちろん僕のことだ。

自分で言うのも気がひけるが、昔から整った顔立ちのおかげで随分とモテてきた。

さらに、日本人には珍しい金色の髪、赤い目も目立っていたのだろう。

女子たちは僕の周りでキャーキャーと騒ぎ、

男子たちは頻繁に遊びに誘ってきた。

高校に入ると同時に、髪を染めようかとも思っていたが、染めても染めなくても変わらない。

どうせみんな、顔しか見ていないんだろう?

僕がどんな人間なのかも知らずに、よくカッコいいなどと言えるものだ。

本当の僕は、カッコいいとはかけ離れた人物だと言うのに。

「はぁ…」

思わずため息が出る。

高校でも、見つからないのだろうか。

僕が心から好きになれる人。

僕の中身まで愛してくれる人。

『…いるわけない、か。』

いつの間にか校長の話は終わっていたようで、僕を含む生徒全員が校歌を歌っていた。