恋のお楽しみは年下上司と業務外指示から

仕事にかこつけて人事から上がった新しい社員についての紹介をチェックする。

年齢は26歳か。

親の会社の後を継ぐ予定でいたけれど、ウチの会社によって吸収合併。

能力のある社員として迎え入れられた、らしい。

そういえば、あの子も確か、わたしよりも4つ年下だった。

名前が似てるだけだから、変なキモチになっただけだ。

年下なんて嫌いだ。

生意気だし、甘えさせるとすぐにつけあがる。

若いからって自分よりも体力があるからすぐに力任せにして。

仕事だって、恋愛だって。

さすがに気持ちがヒートアップしてしまったので、席を立つ。

廊下に出てしばらく歩くと同じ階にある給湯室の前が静かだったので、そのまま中へ入る。

さすがにわたしのことを話題にしているときに堂々と入るのも気がひける。

まあ、阿久津ちひろだったら、がんがん入って自慢して給湯室の空気を悪くして帰るんだろうけど。

コップにお茶を注いでいると聞き覚えのあるハイヒールの音が近づいて、振り返れば肩までのびた髪をゆるく巻いてクリーム色のスカートスーツを着た女が立っていた。

「新しい事業、手伝うことになったからよろしく」

なんて、呑気に言い放ってきたのは、阿久津だった。

彼女はそのまま経営企画課に在籍しながらも新事業をサポートしてほしいと上から頼まれたと、こちらは何も質問してもいないのに自慢げに話してきたのだ。

「……よろしく」

わたしは目を合わせず、コップになみなみと注がれたお茶の表面を眺めた。