恋のお楽しみは年下上司と業務外指示から

「どうしたら諦めてくれるかな、っていう返答を考えてた」

ぽろりと突拍子もない言葉が出る。一樹くんはわたしの答えにため息をもらし、呆れた顔をした。

「そうやっていつまでも生徒扱いしないでくださいよ」

「そういう天堂室長だってわたしのこと先生扱いしてるじゃない」

「南月先生にまだ教えてもらい足りないんでね。教えてもらえませんか、南月先生のこと」

「わ、わたしは、天堂室長のことは高校時代の頃しかわからないし、第一こんなわたしとじゃあ不釣り合いもいいところ」

「臆病になってるんですね。わかりました。僕が南月先生とっての得策を考えましょう」

「得策って、まだおつきあいをしようとか好きとか言ってないし」

「言わせてみせますよ、必ず」

力強い眼差しを送られる。息を飲んで、そんな自信どこから湧いてでてくるんだろうと、心の中でつぶやいた。

「あと、仕事終わったら、室長はナシで。一樹でいいですから。そのほうが呼びやすいでしょう。南月先生」

「……じゃ、じゃあ、その先生つけるのやめてよ。もうあなたの先生じゃないんだし」

「やめませんよ。一緒に帰れそうだったら一緒に帰りましょうね、南月先生。それではまた明日」

と、一樹くんはちらりと後ろを振り返り、肩ぐらいまで手を挙げ、ひらひらと振りながら通りを渡って帰っていった。

部屋に戻り、カバンを下ろすと、すぐさまベッドにダイブする。

今日1日が一樹くんのことでいっぱいになっている。

仕事を必死に頑張っていこうとしている最中なのに。

明日から一樹くんとどうやって顔をつきあっていかなくちゃいけないんだろう。

唇に指をやる。もう触れていないのに、まだ一樹くんの熱が唇に残っている気がした。