恋のお楽しみは年下上司と業務外指示から

部屋の奥の扉にある鍵の入った扉をそっと開けて、資料室の鍵を借りた。

隣にあるドアから廊下に出て突き当たりの階段へ進む。

まさかあの彼が会社にやってきて、わたしの上司になるなんて。

そうであってほしくないと願ったのに、どうして。

資料を片付けながら気持ちも整理しようと、下の階の資料室へと向かった。

一歩一歩階段を下がるたびに、毎日これからどうやって顔を合わせればいいのかという不安で足元がガクガクとして転びそうになった。

人気のない資料室の階にたどりつき、資料室の中に入る。

引き継ぎの仕事がたまって年度末の資料の整頓がおろそかになっていた。

段ボールにつめこんだままの本や資料のファイルをため息まじりに整頓をしていると、ドアを開けようとする音がした。

高城がやってきたのかな、と鍵を開け、ドアを開けると、

「資料室に行けと指示はしていませんがね」

低く通る声で、ぼそっと耳元でささやいた。

ドアの横をすり抜けようとしたとき、ぐいっと手首をとられ、ドアの隣の壁に背中を押し付けられた。

「いや、離して」

「そうやって僕から逃げればいいと思ってるんでしょう」

顔を背けたのに、大きな手によって顔をあげさせられる。

目の前にはにらみをきかせた彼の顔が近かった。

「だから、ここは会社で」

「じゃあどうして顔をそらしたの」

「……それは」

「変わりませんね、全然」

と、彼は目を細め、両頰に笑い皺をつくっている。

「か、変わらなくて嬉しいわ。一樹く……、天堂さんもお変わりなく」

「ええ。全くといって変わっていませんよ。南月先生に対するキモチは」

鋭く暗い闇に吸い込まれそうな視線だ。

あの雨の夜の高校生だった一樹くんが今、目の前にいる。