「ごめんって、屋上に行って何度も繰り返していたのを聞いたの。気丈に振舞って親にも気付かせないで…器が違うんだって、思い知った」

そういうところだったのかもしれないね。
と、菜摘は笑った。

「わりと顔立ちは恵まれた方だったから、小さい頃から可愛がられてきたし、友達も沢山できた。…人間って不思議よね。可愛くて明るい気性の子に声をかけられて嫌な気はしないの。で、可愛い方もそれを無意識のうちに知っているから、嫌がられることを念頭にも置かずに積極的でいられるのよ」

それでもね。

そう呼吸を置いて、由里の見守る前で菜摘は顔を歪ませた。

「一番、一番手に入れたかった、大切なものは、一生手に入らなくなった」

そういうものなんだね、と言った菜摘の目元が濡れているのを見て、由里はやるせない気持ちになった。

「…つまり、高宮優希さんは、本当は誰かに突き落とされたわけじゃなかったの?」