自分が立派な性格をしているとも、固い正論を言うタイプだとも思ったことは無いし、実際それほど優等生ではない。

だけれども、正常な道徳感覚は持っているつもりだった。

それが、自分がおかしいのかと思うほど不気味に皆が楽しそうなのだ。

人の醜い面を見てしまった、薄ら気味の悪い気分になった。

由里は、その時の気持ちを思い出して深く息を吐き出した。

「由里みたいな人には分からないだろうと思うよ。皮肉でもなく、単純に」

菜摘は淡々と口を継いだ。

「私、好きだったの。多分、優希のことが」

「………え?」

問い返した由里は、頭にその言葉を染み込ませるようにしばし沈黙した。

「恋愛感情でってこと?」

「それは明確じゃないけど、大事な人だった。笑顔が見たくて、誰より隣にいたかった」

でもね、と菜摘は泣き顔のような笑顔を見せた。