当時中学三年生だった由里と菜摘は、同じクラスだった。つまり、今から一年前のことだ。

積極的で華のある顔立ちをした二人は馬が合い、すぐに仲を深めた。

まだ蝶とは仲良くなっていない頃で、よく行動を共にして人々の目を引いた。

さっぱりとした気性の由里とは対照的に、いささかねちっこいところのある菜摘だったが、気に留めるほどのものでもなかったので、由里はむしろ菜摘の性格を好んでいた。

しかし、その夏のあくる日、全ての始まりとなった事件が発覚した。

菜摘の隣の席で、明るく優しい女子が自殺したのだ。名を高宮優希と言って、その性格や笑顔は皆に好かれていたため、クラスに大きな衝撃を与えた。

飛び降りたの、と菜摘は言った。

ある人の手によって、と。

問いただそうとした由里だったが、その直後に菜摘は転校した。その謎めいた言葉を手がかりに沸き立つクラスメイト達は、紀ノ川蝶というさしてそれまで目立つこともなかった少女に目を留めた。

優希の幼馴染みで、距離の近しい人物だったということなのだ。