「由里?」
その声に、俯いていた由里は弱々しく顔を上げた。

「……菜摘」

そこには、由里のかつての親友が目を丸くして立っていた。

菜摘は、次に止まった駅で空いた由里の隣に座った。

「久しぶりだね」

さらりとボブカットを揺らし、深い黒の瞳で微笑んだその少女は、反対側の窓の夕焼け空を見つめた。

「なんで今さら…」

睨みつけるというよりかは、呆然とその姿を見た由里に、菜摘は振り向いて目を合わせた。

「黙って行って、由里には本当に悪かったと思ってる。ごめんね」

「……………」
何も言えずに押し黙る由里は、あの日の菜摘の同じような顔を思い出していた。