しかし、蝶は微かに目を開けて固まった。

どうして。
頭の中がその問いで溢れかえる。

目の前遠くに突っ立つのは、由里だった。

その目から、静かに涙が流れ落ちるのを、蝶は高月の腕の中で見た。

そのまま走り去る由里を見て、蝶はぼんやりと理解した。

私は今日、二つの永遠に手に入ることのないだろうものを手放した。

喪失感に身を任せてまた人を傷付けて、その代償は。

こんなにも、大きかった。