「あなたの気持ち、私には解らない」

「ごめん」

深く頭を下げた彼女に、周りの目を気にしてしまう。

「謝って欲しいわけじゃない」

そう、ぶっきらぼうに言うと、彼女は唇を引き結んだ固い表情で顔を上げた。

「伝えたいことが、あったの」

蝶は、彼女を見返した。
その真剣な双眸に射抜かれて、冷や汗が背を伝った。

「…なに…?」

恐る恐る聞き返したその時だった。

「蝶?」
訝しげな声が、二人をはっとさせる。

「高月…」
驚いたように言った蝶に、高月は彼女を気にしながら近づいた。

「なんか、ごめん。先帰るわ」

遠慮がちにそう言い、踵を返した高月に、蝶は思わず袖を引いた。