由里には先に帰っておいてほしいと直接伝えてあるが、未だ何と伝えていいのかも分かっていない。

それをそのまま伝えれば、高月は待ってくれる気もしていたが、これ以上待たせるのは嫌だった。

「勝手かな」

落ち込んだ蝶は、下校途中の集団がざわざわしているのに気づき、顔を上げた。

「えっ……!」

名前を呼ぶことすら出来ずに硬直する。

「蝶」

控えめな声に、喉から一気に水分が失われた心地になる。

「ど…して…」

呆然とする蝶の前には、彼女が凛として立っていた。他校の制服を着たままで、少し息を切らしている。

「さよならって、言ったじゃない」

その言葉に、彼女は刺されたように顔を歪めた。

「あなたがそう言ったから、私は…っ」

引き攣れたように息を吸い込んだ蝶は、吐き捨てた。