「おはよ」

高月の振り向く仕草に、どきんとした。

「おはよう。…こよりちゃん、おはよう」
「うん。おはよう」

その穏やかな声音に、ほっとする。

「今日って、クリスマスイブだね」
「あ…そうだね」
何気ないこよりの言葉に、蝶はぎこちなく相槌を打った。

「明日は土曜だから家でゆっくり出来るけど、今日は学校か」

残念な調子のこよりに、蝶も笑って合わせた。

(…どうしよう…)
授業中、後ろの席だからというのもあるが、ちらちらと前の高月の様子を眺めてしまう。

くせっ毛のために跳ねた髪に、何気なく手を伸ばした。

(って、何やってんだ、私)
急にバツが悪くなり、手を引っ込めた。

廊下側の席だから、窓が遠い。

晴れ間の見えた空が視界に入り、蝶は頬杖をついてそちらに目を向けた。