「んー…不器用な人、かな」

そう言って、由里は笑った。

その笑顔に飲み込んだ思いを感じて、足が止まる。

何かを抱えていても、誰かのために笑ってしまう君だから。

名前を呼びかけて、蝶は思いとどまった。
その瞳が、拒絶を示すように冴え冴えと光っていたからだった。

ゆっくりと、つばを飲み込む。

「私の知ってる人?」

由里がこちらを見る。
視線が合って、口が動いたのが見えた。

「違うよ」

その言葉に、肩の力が抜けたのが自分でも分かった。

「そっ…か」

硬い意思のようなものを感じたのは、思い過ごしか。

そう考えた蝶は、校門をくぐった。

由里は静かに蝶から視線を外した。