「相談してくれればよかったのに」

「…うん。ごめん」
そう返すと、由里は解ってる、と首を縦に振った。

「それでは駄目だったんでしょう。だけど、どれほどの心配をかけるかくらい考えて欲しかった」

「本当に、ごめんなさい」

正論に返す言葉もなく、蝶は頭を下げる。

由里はため息をついた。

「蝶が、そういう大人しく見えて大胆なところのある子だとは知っていたけど…何も言わずに大怪我するのは、悲しいよ」

そして、病室を後にした由里は、最後に振り返ってこう言った。

「高月の奴、ずっと蝶についてくれてたんだよ。私が来たから遠慮して外に出てしまったけど」

思わず目を見張った蝶を尻目に、由里は微かに笑ってドアを閉めた。

高月。その名を聞くと、胸に刺されたような痛みが走った。

あの時、高月はなんと言っていたか。