「目が覚めた?」

意識が戻って一番初めに目に入ったのは、由里の泣きそうな笑みだった。

「由里…」
そんな顔をしないでと言いたいのに、乾いた喉は言うことを聞いてくれそうにないから、その頬に手を伸ばした。

由里は驚いたようにその手を取って、何か言いたげに目を細める。

「ここ、県立の総合病院よ。あんた、肋骨が折れていて入院することになったの」

そう言うと、由里は息を吸いこんだ。

「どうしてそんな無茶したの」

その声の響きに、胸がつまった。

「…自分の力で変わらなきゃ駄目だと思って」
「大人数に苛められたって聞いたけど」
「うん。やっぱり、無理だった」

頬を歪めて笑った蝶を見て、由里はすんでのところで溜めていたものが溢れるのを感じた。

「どうして…!」
言葉にならずに、涙を拭おうともせずに蝶の手を握りしめた手に力を込める由里に、蝶は声をかけられずに黙っていた。