「大丈夫か。どこ痛む」

使い物にならない体を見て、私は静かに返した。
「全部」

だよな、と悔しそうに言う高月は、私を背負って屋上のドアを押し開けた。

その背中の温度と揺れが心地よくて、瞼がだんだんと落ちる。

「お前に、言いたいことがあったんだ」

その言葉に、寸前で僅かに目を開けた。

ほぼ夢の中にいた蝶は、淡い光の中で、「好きだ」と誰かに言われた気がした。