ため息をついた蝶は、我慢して一時間目を耐え切った。

転校生のように質問攻めになるかと思いきや、教室は至って静かで何だか拍子抜けしてしまう。

教科書を取りに行こうと席を立つと、すれ違った人影に肩を押された。

「っ」
がたがたっ、と音がして、教室のほぼ全員が振り向く。

机と椅子を巻き添えにして後ろに倒れ込んだ私は、その視線に耐え忍んで机を立て直すしかなかった。

「大丈夫か」

「あ、うん。ごめん」

高月がそれを手伝ってくれるけれども、ひりひりするような視線を感じて、不穏な予兆が見え始めていると思った。

案の定、その予感は的中した。

授業中に落としたペンが派手目な女子の足元に転がる。

気づいたふうのその人に、私がごめん、拾って、と小声で言ったが無視され、足でペンを反対方向に転がされた。