大丈夫。

教室の扉の前で、蝶は深く息を吸いこんだ。

思わず、昨日のことを思い出し笑いした蝶は、担任の訝しげな目に気がつき慌てて真面目な顔をつくった。

「緊張していると思うけど、みんな歓迎しているからね。来てくれて良かったわ」

口調とはうらはらに、笑っていない目元を見て、厄介者だと認識されていることを理解した。
嘘だ、と言いたくなるのを飲み込んで、蝶は笑った。

「はい」

(……大丈夫)
まだ、頑張れる。
だって。
好きって気持ちは、力になる。

蝶は、右手に力を込めて、教室のドアを開けた。

一斉に、視線に体中をまさぐられる感覚がして気持ち悪くなった。

吐き気をこらえて前を向くと、先生にだいたいの説明をされ、私も頭を下げる。

上辺だけの拍手が起こり、大半のだるそうな生徒の姿が視界に入った。