『私じゃ、その打開のきっかけには足らないかな』

ほんの小さな声に、蝶ははっとした。

「由里」

そんなことないと即座には言えないのに、そういうことではないと分かって欲しくて、蝶は呼びかけた。

「いつも私の力になってくれて、ありがとう」

いつだって、私の光でいてくれる。

その由里が自信を失くして言っているなら、勇気づけるのは私であるべきだ。

「由里がいてくれるから、私はいつでも最後の希望を失わずにいられる。大好きだから自信もって、由里」

みんなが好きになる由里。
明るくて、優しくて、少し気が強いけれど笑顔が可愛らしくて。

いつもみんなの中心にいる由里も、時折元気をなくしてしまうのかと意外に思った。

『…蝶ってなんで、臆面もなくそんなこと言えてしまうのかな』

照れた時のくせで、ぶっきらぼうになる由里に思わず笑った。

「それは由里相手だからだよ」

伝えたいと思うことは、口に出さなくては伝わらない。そう教えてくれた人が、いたから。

『私も大好きよ。いつか学校来てね。急かさないけれど、私はあんたに来てほしいもの』

心を込めた口調に、蝶は微笑んで、由里には見えないけれど頷いた。

繋がった心の糸が、優しく震えた。