外を眺めていた。

窓際で頬杖をついた君が、ふと振り返る。

その時私は、どんな顔をしていたのだろう。

「蝶」

呼ばれた私がはっと横を向くと、怪訝そうな顔をした友人の堀川由里が英和辞書を手に立っていた。

「ごめん。何?」
「何、じゃないでしょう。中間考査まであと二週間を切ったから、勉強すればと言い出したのは蝶のくせに」

首をすくめてみせた由里の姿は驚く程に様になっていて、私は頷くしか出来ない。

蝶というあだ名のような名前は、私のものだ。両親の趣味はまるで理解出来ないが、本名を説明しておくと、紀ノ川蝶という。

「そう、だったね。英語から復習しようか」
「そのつもりで持ってきたんだったら」
むくれながら席についた由里の勉強を見ているうちに、図書館を出るまで彼女のことは忘れていた。

「あ、…雨」

ぽつりと呟くと、由里も窓の外を見て顔をしかめた。