クーラーの稼働音がする。机に伏せて、耳を澄ますと余計にそう感じる。
私は、奏に露骨に避けられたショックを放課後までずるずる引きずり何もやる気が起こらなかった。
可愛い奏じゃ、ない。喉仏とか、弟よりも男らしくなってたし。
弟を捕まえた手が、私より大きくてゴツゴツ骨ばっていた。
くつも、お父さんみたいに大きいのを履いていた。
靴が大きい人は身長伸びる。成長期を迎えた奏は、きっと二メートルに伸びるんだ。きっとそうだ。
「美空、プリント頭に乗せていいの?」
ホームルームが始まる前に、次々に前から配られていくプリントに平伏する。
夏の夏期講習のお知らせ、三者面談の希望日記入用紙、毎週土曜のテストのスケジュール表などなど。
就職する私は、夏期講習免除にならないかな。
プリントを見ながら思うのは、楽な道を探す言い訳ばかり。



