先生、僕を誘拐してください。



「うるせえ」

「喋った!」

喋れって言ったのはお前だと、言わんばかりに睨みつけてくるけど、その顔は真っ赤だ。

ぷくくくっと笑い声を堪えていると、急に真面目な顔になった奏が私の顔を覗きこむ。

マスクをしてるとはいえ、鼻があたりそうなほどぎりぎり近づいてくる。

いつの間に、ちょっと屈まないと私の顔を見れなくなったんだろう。

そんなに背が伸びたの?

低くて、綺麗な声。カナリアが高くて綺麗な声だと誰が決めたんだ。

私は奏のその声も嫌いじゃない。

一瞬の中で、そんな風に色んな感情が沸き上がった私に対し、奏は容赦ないデコピンをしてきた。
「痛っ」
「……美空もちゃんと、本音喋れよ」
「なっ やっと喋ったと思ったら、なんでいきなりお説教なのよ」

「当たり前だろ! 自分が傷ついてるからって相手を傷つけていいわけじゃない!」

奏がマスクを外しながら、大声で私を刺す。
そんなに大きな声で言わなくても、こんなに近くにいるのに、なんで怒鳴るの。
じわりと涙が浮かんで、思わず後ずさった。

「奏も嫌い!」