見た目の可愛さや、華奢な身体、そして女の子みたいに高い声域。

どれをとっても、私には可愛い、構いたくなる弟の様な存在だった。
家庭教師にしたって、素直でぐんぐん吸収して、成績も上がっていった。

この高校に受かった時、私に一番先に知らせに来たのに。


高校に入って、私と同じ目線になっていることに気付いた。

この三カ月で、身長が5センチ伸びたと蒼人が驚いていた。

けれど、私の前では一言も喋らなくなった奏からは、何一つ聞いていない。

「……さっきみたいに露骨に避けられると、なんかへこむんだけどなあ」

なんであんな風に無視するかな。反抗期みたいなもの?

なんで幼馴染に反抗するの。

あと何カ月したら、反抗期は終わるの?

私が卒業したあと?

この高校から、気配が消えた後?

せっかく同じ高校に入って、楽しみだったのに、幸せを思いっきり誰かに引きはがされて、屋上から捨てられてしまった気分だ。

彼の気持ちが今はもう、何も分からない。